∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

理論バカと感覚バカ

右腕(シュートを打つ腕)をまっすぐにし、ボールをおでこの前ぐらいに持ってくる。そして、スラムダンクでの名言、左手は添えるだけ。足は肩幅ぐらいに広げ、少し内股にする。つま先の延長戦上にゴールがあるイメージです。ひざを曲げ、足を伸ばすと同時に、右腕を伸ばし、ボールを放ちます。脇が開かないように、そして、左手に力が入らないようにするのがポイントです。そして、ボールが手を離れる少し前に手首をスナップさせます。

 

これは、バスケットのシュートの理論です。バスケットをやったことがあれば、確かにそうだな、と思ってもらえるはずです。でも、この理論を知って、実践ができるか、というとできません。理論と実践が大きく異なるのは昔から言われていることです。

 

でも、どうして理論ではわかっているのに実践ができないのか、については知っているでしょうか。「あいつは理論バカだ。理論と実践の違いがわかっていない。」なんて言ってて、理論と実践が異なる理由を説明できないとしたら、その発言をする人自体が、「理論と実践は異なる」という経験則から導かれた理論を知っているだけの理論バカですよ。

 

よく言われるのが、実践は理論通りにはいかない、という奴です。例えば、数式モデルの理論なんかは、完成形をシンプルにするために必ず仮定を導入しています。つまり、想定外の場合は無視しているのです。実際には想定外だから、というよりは計算上複雑になるから、という都合で想定外は無視されているので、現実世界では全然想定外じゃないことを無視していたりします。

 

スポーツのマニュアルでも同じことです。冒頭では、バスケットのシュートフォームについて注意点も含めて詳しめに記述したつもりです。が、はっきり言って言葉足らずです。気を付けるべきポイントをもっと無数にありますし、「同時に」とか「少し前に」といった曖昧な表現も見受けられます。曖昧な表現だから悪い、ということではなく、曖昧にすることで柔軟性の高いものにしている。そうすることで一般的な正解らしいものとすることができ、それこそが理論なわけです。

 

初めから応用されることを前提に打ち出されたものなので、当然、理論だけでは十分ではありません。だから、マニュアル通りにシュートを打とうとしても初めから上手くはできないのです。

 

特にスポーツなどの場合、仮に完璧な理論が存在したとして、その通りにやっても上手くはいきません。理論をわかっているだけだと、頭で考えてから行動に移せる、というレベルです。バスケットのシュートモーションは、時間にして約1秒程度です。この1秒の間に理論から体の動きを計算し、その通りの動作を出力することは、スパコンでもない限り不可能です。だから私たちは膨大な理論を基に感覚として記憶するのです。PCでいうキャッシュメモリみたいなものですかね。

 

このため、多くの人は体で覚える方が頭で覚えるよりも良いことだと勘違いしています。いえ、自分がプレーヤーとしてやる分には体で覚える方が良いのだと思います。ただ、彼らはコーチなどの教える立場になった時に苦労することでしょう。それは感覚でしか覚えていないので、だれかに理論として伝えることができないからです。

 

でも、プロ野球選手の中にはプレーヤーとして活躍した後名コーチになる選手もいるじゃないか、なんて批判が出てくるかもしれませんね。それは彼らが感覚で理解して、頭でも理解したからだと思います。結局、高みに行くにはどちらも必要なんですね。スタートが異なるだけで目指すところはあんまり変わらない。大切なのは、自分は理論から入った方がいいのか、感覚から入った方がいいのか、という判断だけでしょう。理論バカを否定する感覚バカもフィールドが異なれば否定されるかもしれません。