∑考=人

そして今日も考える。

プレゼントに何を贈るべきか?

さて、もうすぐクリスマスですね。カップルの間では、クリスマスにプレゼントを渡し合うのが暗黙のルールになっています。そんなプレゼントに何を買えばいいのか迷う人も多いと思います。

 

誕生日プレゼントなどもそうですが、ほとんどの人は、プレゼントに何を贈ったらいいんだろうと頭を悩ませたことがあるはずです。一般的には「気持ちが大切」と言われます。贈り物自体の質よりも、贈ったという行為や、プレゼントを選ぶために努力してくれたことについて感謝の気持ちを感じるべきだという意味合いが含まれているのでしょう。

 

ただ、この「気持ちが大切」というマインドは、自分がプレゼントをしてもらう側限定のものであり、自分が相手にプレゼントをする側の立場で過度に信じ込むと、手抜きのプレゼントになってしまいます。なぜなら、「自分が気持ちを込めること」と「相手にとって気持ちがこもっていると感じること」は別ものだからです。ひょっとすると、一生懸命選んだのに相手にがっかりされたことのある人もいるかもしれません。

 

人間がプレゼントにおいて感情的な要素を大切にするのは事実ですが、結果的にプレゼントの質を下げてしまう可能性があります。なので、今回は、贈る行為自体の価値ではなく、あくまで贈られるプレゼントの質のみにフォーカスして、どんなプレゼントが最も良いのかを考えてみることにします。

 

例えば、行動経済学の世界では、現金をプレゼントするのが最も良い、という結論も合理的に導き出されていたりします。現金をプレゼントしてもらえた方が、自分の好きなように使えるし、自分自身で選ぶことができるからです。

 

しかし、これはある前提条件に基づいています。それは、相手(他人)が選ぶよりも自分で選んだ方がより良いものを選ぶことができる、というものです。つまり、相手よりも自分の方が自分のこと(趣味や嗜好)をよく理解している、という一般的な共通認識の上に成り立っています。

 

例えば、ビジネスの場で顧客の本当のニーズを聞き出すのは難しいと言われています。顧客の欲しいものを作っても売れない、というのも今では常識になりつつあります。この理由がまさに、顧客自身が自分たちが本当に欲しいものがよくわかっていないためなのです。

 

これと同じことが一般人にも言えます。自分が本当に欲しいものは自分でさえわかっていないのです。そのため、現金を渡しても、良いプレゼントを手に入れられるとは限らないのです。同様に、相手にひたすら何がほしいか聞いて、それをプレゼントするのはベターであっても、ベストとは言えません。

 

また、もう一つの決定的な理由として、これらのプレゼントは、あなただけではなく他の誰でも贈ることができるからです。例えば、相手が「シャネルのバッグ(特定の一つ)がほしい」と言ったとします。これはお金さえあれば誰でもできるプレゼントです。つまり、あなたがプレゼントする意味がなくなってしまうし、プレゼントに対して付加価値をつけることもできません。

 

では、何を贈るのがいいのかというと、下図の灰色部に含まれるプレゼントです。

              

Aが相手が欲しいと自覚しているもの、相手が自覚している自分の好みです。そして、Bが相手が潜在的に本当に欲しいと思っているもの、相手が潜在的に持っている本当の好みです。本人が自覚していて、しかも本当に自分自身の好みであるのはこの図ではA∩Bの範囲のみです(本来はもう少し広い範囲になっているでしょうが・・・)。

 

Cは相手に対するあなたの認識です。あなたから見たときに、相手はこんなものが欲しいんだろうなー、とか相手はこんなものが好きなんだろうなー、と思うものがここに含まれます。実際問題として、本当の相手、相手の自己認識、あなたの相手認識にはこのようにズレがあります。この図はかなり誇張されているように感じますが、もしかするとこれ以上にズレているのかもしれません。

 

灰色部が示すのは、本当の相手が潜在的に求めているけど、本人にその自覚はなく、それでいて、あなたが認識している部分です。つまり、相手に自覚はないけど、あなただからこそ知っている相手の本当の好みに合ったものをプレゼントするのがベストなのではないか、と思います。これが考えうる最高のプレゼントになるはずです。

 

では、その部分をどうやって見つけるのか?そこに明確な正解はありません。最終的には、それを自分なりに考えて答えを出すことが、相手にプレゼントを贈るということと同義なのかもしれません。