∑考=人

そして今日も考える。

真面目でいいじゃない

よく「この車両は法定速度順守車です」みたいな張り紙がついてるトラックがあると思うんですが、あれって何の宣言なんですかね。そもそも法定速度を守るのは法律で決まってるんだから、あーいう言い方をすると、普通の車は法定速度守ってませんけど、みたいな意味合いが含まれてしまう気がします。まぁ事実としてそうなんでしょうが。

 

コンビニで見かける「トイレをご利用の際は店員に一声お掛けください」という張り紙も一見、存在意義がわかりませんね。ぶっちゃけ勝手に利用したことは何回もあるけど、怒られたことは一度もありません。勝手に利用する人も少なからずいるようです。

 

同様の掲示物がパチンコ屋にもあります。「店内での歩きタバコはご遠慮下さい」というもの。贔屓目に見積もっても、パチンコ屋にくる喫煙者の過半数は平然と歩きタバコをします。床に灰を落とすのです。ファミレスとかでは考えられない光景です。喫煙者が減ってきているものの、未だにパチンコホール全体が灰皿として認識されているのです。一体誰が掃除すると思ってんじゃボケー。

 

正規のマニュアルとして確定しているわけではありませんが、パチンコ屋は歩きタバコ禁止の掲示物を出しても、歩きタバコをしているお客さん自体を注意することはありません。暗黙の了解なのでしょうね。私が今まで働いてきた店では、どこも店全体としてそういうオペレーションをとっていました。

 

最初に働いた店では、はっきり「注意してはいけない」と店側から言われていました。理由は簡単、「店員が掃除すればそれで解決するから」とのことです。お客さんに注意、換気して正しい振る舞いをするように促すよりも、店員の側が対応する方が速い、という判断に基づくものです。面倒なトラブルにもなりかねますしね。

 

似たような問題として、お客さんが「タンを床に吐いたとき」あるいは「ガムを床に吐き捨てたとき」にはどういった対応をするべきなのか?という問題が出されたこともありました。一般的な感覚なら、さすがにそれは注意するべきだろー、って思うはずなんですよ。でもこの場合も注意してはいけないのです。だって店員が掃除すれば済む話ですからね。

 

じゃあ果たして「歩きタバコ禁止」の掲示物に意味はあるのか、と元の話に戻ります。どうせルール守らなくても怒られないし、店員さんが掃除してくれるんだからそんな張り紙には何の意味もない。確かにそういう意見もあるでしょう。

 

しかし、この看板が無駄という結論に至るのは、0か1かのデジタルな発想を抜け出せていない証拠です。実は、パチンコ屋に置かれている歩きタバコ禁止の看板は規則ではなく、「お願い」なんですよ。できる限り守ってください、あるいは守れる人だけ守ってください、という意志表示なわけです。コンビニのトイレの張り紙もおそらく同じでしょう。

 

少なからず、その看板があるおかげで、ちゃんと灰皿を使ってくれる人もわずかながら存在するはずです。そんな心優しい人のためだけに意味をなす看板なのです。これはボランティアや募金活動みたいなものであり、たった少しの優しさで店員の負担は軽減されるのです。

 

こういうことを言うと間違いなく、真面目にルールを守っている人が損じゃないか、といった批判に繋がるでしょう。私もそれについては非常に共感します。しかしながら、「真面目な人が損」だと考えるのは、結局自分のことしか考えてない人たちなんじゃないか、と思います。そう思うなら守らなければいいだけの話なのです。

 

おそらく灰皿をちゃんと使う人も、募金をする人達も、それ自体損とは考えていないでしょう。別の誰かを助ける喜びの方が、多少の我慢に耐える辛さよりも大きい、それだけのことです。

 

「真面目な人は損をする」と様々な場面で言われます。私自身、真面目過ぎると損をすることは重々承知していますが、本来、真面目さは誇りに思うべきポイントです。周りから損をしていると言われようが、自分がそれでいいと心から思えるなら、真面目でいいんじゃないかと思います。真面目であることは短期的に見れば損なことは多いでしょう。でも、真面目な行動は、見ず知らずの他人を助けているものです。

 

見ず知らずの人を助けたからといって、その恩が必ず返ってくるわけではありません。でも周りからの信頼や評価には必ず影響します。それに、母体数を増やしていけば、100人に1人ぐらいは恩を返してくれるかもしれません。たとえ恩を返してくれる人が1人もいなかったとしても、自分は誰かの役に立ったんだという自己満足があればいいじゃないですか。

 

真面目に固執する必要は全くないと断言しますが、真面目であることにもメリットはあるのです。