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そして今日も考える。

lose-loseの就職制度を変えるために

今の就職活動は大量の敗者を生み出しています。もちろん、数字の上では内定率は回復傾向にあります。しかし、一人あたりのエントリー数とかを考え出すと、量の上に成り立っているだけで、確率的に勝者になれる確率は依然として低いままです。

 

Fランク大学の学生はいくら受けても内定がもらえないといった事実は社会的にも問題になっていますが、中小企業も優秀な学生に逃げられてしまうことに問題を抱えているようです。つまり、本当に問題なのは、学生によって厳しい制度というだけでなく、実はほとんどの企業にとっても困った状況であること、すなわちLose-Loseの関係になっていることです。

 

このようなLose-Loseを引き起こしてしまう原因として、学生も企業も身の丈をわきまえていない、ということです。そして、現在の就活問題の解決策として用意されているのは、身の丈をわきまえた選択を促すものではなく、小手先のテクニックの指導などにより、「いかに相手を出し抜くか」に注力したやり方です。

 

全員が出し抜き合いで勝負しているのですから自然と能力のない人たちは敗者になってしまう、というわけです。実力不十分でも、数さえこなせば、1つぐらいひっかかる。50社受けて当たり前なんて価値観がどうかしているのです。もちろん、多くの人がその考えに賛同せざるを得ないのもわかりますが。

 

この考え方が主流になってしまうと、絶対に大量の敗者が生まれます。大学受験と同じ構図なんです。勉強を全くしてこなかった学生が、一流大学をいくら受験しても受かりません。そもそも能力基準を満たしていないし、定員人数も決まっています。いかに小手先のテクニックを駆使したとしても、本質的に勉強の生徒と戦えば、勝率はかなり低いでしょう。

 

別に大学受験は、失敗しても人生が終わるほど深刻に考えられているわけではありません。大量の敗者が出る厳しい世界ですが、負けたからと言ってさほど深刻視はされないのです。それに、模試などの結果から、身の丈に合った大学を選ばざるを得ないところもあり、結果的にどこの大学にもいけない人は少ないのではないかと思います。

 

さて。今の就職活動は全員が優良企業を目指している感が否めません。そして、その失敗は大学受験ほど楽観的には考えられてはいないようです。しかしながら、今の就職サポートは、利用する特定の人の就職確率を上げることはできても、全体で考えたときに敗者自体は絶対に減らせない仕組みになってしまっています。

 

なぜ、そうなってしまっているのかというと、正しい会社像と正しくない会社像が明確にわかれてしまっているからです。一つの例として、ブラック企業というだけで、その会社の全てが悪いような印象を受けてしまいます。

 

しかし本来、ほとんどの会社にブラックな要素はあるに決まっています。私が選んだIT業界なんて全ての会社がブラックだと思っていますし、それを承知で選びました。でも、内定者たちと会話していると、「どこどこの部署がブラック」みたいな話で盛り上がっており、なるべくブラックではない部署の配属を希望する人もかなりいたようです。世間の煽りのせいで、ブラック企業であることが必要以上に悪者あつかいされています。

 

そして、学生はブラック企業以外ならどこでもいいとか考えるんですが、その基準を設けることで選択肢はすごく減ってしまうんですね。つまり、今のあなたにはブラック企業で働くぐらいの能力しかないということなんですが、それをどうも受け止めることは難しいようです。

 

私の中学の友人はFランク大学卒でしたが、10社も受けることなく内定を勝ち取りました。それは他でもなく、自分の能力をわきまえていたからだと思います。労働環境はかなり過酷なようですが、そんな環境から逃げ出すことなく働き続けることができているのも、自分をわかっているからでしょう。

 

出し抜き勝負から抜け出さない限り、敗者は増え続ける一方です。もちろん、挑戦をしないべきだと言っているのではありませんし、身の丈をわきまえてできそうなことだけやれというわけではありません。

 

身の丈をわきまえた上で、挑戦をしていくことが大事です。これは学生も企業も同じです。こういった価値観が浸透していけば、優秀な学生に逃げられることを問題視したり、内定が出ないことに対する不満も少なからず解消されていくでしょう。