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そして今日も考える。

確認作業を徹底するとミスが増える

様々な仕事において、確認作業が極めて大切であることに異論はないでしょう。ミスを防ぐために最も最適かつ単純な方法であり、その責任の重大さから、今のところロボットですら代替はされていない業務だと思います。

 

パチンコ屋の仕事でも確認作業の重大さを何度も説かれました。人様の、決して少なくはないお金を扱うことになるので、交換忘れをしていないか、お金の情報が入ったICカードを取り忘れていないか、カウンターであれば、玉数に見合った文鎮(お金)をきちんと渡せているか、そういった確認を必ずする必要があります。

 

「確認作業はいくらやってもやりすぎることはない」と言われるくらい、ゆっくりでもいいから、確認だけは忘れないように、という方針で仕事をしている組織は多いんじゃないかと思います。一つのミスが信頼の損失につながってしまい、責任が問われるからです。

 

しかし、この言葉をバカ正直に鵜呑みにするのはいかがなものかと思っています。不思議なことに私が働いてきたパチンコ屋では、確認を念入りにやる人ほどミスが多かったのです。

 

パチンコ屋で働く人のほとんどは「交換忘れ」というものを大抵一度は経験するものです。私も過去にやったことがあります。で、その原因は確認をしっかりしていないことためだと上司からは半ば決めつけられてしまいます。

 

すると、改善策として、確認を念入りにしたり、確認をしたことを報告する、みたいな方法が取られます。ほとんどの人は、これによってミスをほとんどしなくなります。しかし、一部の人はいくら確認作業を念入りにしてもミスの割合いが多いです。

 

実のところ、ミスをほとんどしなくなった人が確認作業を徹底しているか、というと、ほとんどしていません。むしろどんどん確認作業自体は手短に済ませるようになります。結果的にはそういう人の方がミスをしないのです。もちろん、一度犯した失敗によって意識改革が起こった、というのは大きいとお思います。

 

これに対し、確認作業を徹底する人たちはなぜかミスを犯してしまいます。すると、上司からさらに確認作業を徹底するように指示され、結果大した改善もされないのです。これはなぜでしょうか。

 

結論から言うと、ミスをする原因が「確認を怠ったから」ではないからです。結果ベースで分析すると、例外なく、ミス発生率が多い人は確認を疎かにしている人ではなく、単に業務処理能力が低い人でした。

 

彼らは忙しいときにミスをします。なぜかというと、忙しくなると普段のような徹底した確認作業ができなくなるからです。そして、徹底した確認作業に慣れきっているため、手短にチェックするとボロが出ます。

 

つまり、「確認をしすぎてもしすぎることはない」なんて真っ赤な嘘であり、確認作業を徹底することにより、業務処理スピードが遅くなって、ミスをしやすい精神状況を誘発してしまうリスクが高くなるんですね。

 

だからミスをなくすには、確認を徹底するよりも、いかに業務処理能力を上げて、常に冷静でいられるようにするのか、ということが大切なんです。ミスの原因は人間の精神的な弱さに起因します。ならば、精神的に弱らないタフさを身につける方が手っ取り早いです。

 

もちろん、慢心や余裕から来るミスというのもありますが、これもやはり確認作業を徹底したからミスしなくなるという簡単な話ではなく、意識面、精神面が大きく影響しています。

 

そもそも、人間100%ミスをしないなんてありえません。そういう前提で考えれば、必要以上に確認作業に時間を費やすということは、業務処理能力の低下、そしてチェック能力の低下を引き起こす可能性が高く、さらなるミスを発生させるリスクを生み出しているのです。

 

ミスをしたのは自分が確認を怠ったせいだ、と本気で考えている人は、一度自分の業務能力を疑ったほうが良いのかもしれません。