∑考=人

そして今日も考える。

if文ぐらい自分で書き足してください

例えば、私が働いているパチンコ屋では初めに働き出した頃は誰もが上司からこんな言われます。「業務的なことはできなくてもいいから笑顔だけはやってくれ」。そして、本当に笑顔だけやっていたとしても、そのうち「笑顔だけじゃダメだ」と言われる日が来ます。最初は笑顔だけでいいと言ったくせに、結局笑顔だけじゃダメだと言われ、どっちやねん!矛盾しとるやないか!と感じる人もいるでしょう。

 

他にもいくつか例はあると思います。「人に頼ってばかりじゃなく自分で考えろ」と言われたと思いきや、「自分でできないなら人の力を借りろ」と言われる。普通に考えれば、これは理不尽でしかありませんよね。

 

確かに表面的な言葉は矛盾しています。しかし、それは上司なりの、あなたを迷わせないための優しさなのです。何もできない人に、いきなり全部を伝えても頭がこんがってしまいます。だから要点を絞るためにあえてそう言う言い方をしているだけなのです。

 

あまり言葉の矛盾をつくのが上手くなってしまうと本質を見過ごしてしまいがちです。あの人は言うことは矛盾しているから、聞く耳をもつ必要はない、とふんぞり返ってしまいます。でも、そういった矛盾を内包できる人が色んな物事を柔軟に処理できたりするのです。

 

矛盾した意見に納得するのは難しい物です。相手の説得力うんぬんではなく、自分の知性が求められます。矛盾した意見を理不尽に感じる納得するためには、相反する二つの意見を言われた時に、自分の中に条件分岐を追加する思考プロセスを組み込んでみることです。

 

残念ながら、人が他人に対して発言できる時間は限られています。もちろん、全ての時間を他人に捧げることが可能であれば、全ての事柄について時間をかけて伝えることができるでしょう。しかし、どんな場面でも、相手に伝えられる意見は、その人が持っている考え方の一部でしかありません。すると、例外までは教えることができないのです。

 

一つの例として、「遅刻は絶対にいけないこと」という考え方を持ったAさんがいたとします。そして、Aさんの部下であるBさんが寝坊で遅刻したら確実に咎められるでしょう。しかし、Aさんの部下のCさんが、母が倒れて病院に連れて行って遅刻したとしたら咎められるでしょうか。また、咎めなかったとして、そのことに対して、矛盾していると感じるでしょうか。

 

そうなんですね。ほとんどの場合、矛盾しているわけではなく、ただ状況が違うだけなんです。「遅刻はいけない」けど「緊急の場合は許される」という考え方は、もうほとんどの人が頭の中に刻み込まれた条件分岐的であるため、矛盾とは感じないのです。

 

プログラムの世界には条件分岐を表すif~else文という非常に便利な構文があります。これを使って表すなら、

 

if(緊急の場合)

  遅刻はOK

else(そうでないなら)

  遅刻はNG

 

 

という感じです。上記の通り、このプログラムはほとんどの人の頭の中には記述されています。

 

しかし、初めからこのプログラムが書き込まれていたわけではありません。まず、1番最初に記述されていたのは、

 

  遅刻はNG

 

だけです。他人から「遅刻はダメだよ」と言われた時に、脳内に刻まれます。しかし、人間なら、一度くらい遅刻することはあるでしょう。寝坊が原因のこともあるでしょうし、電車が人身事故を起こしたせいで遅刻することもあると思います。すると、遅刻はNGのはずなのに咎められない、経験が蓄積されていくわけです。そんな経験を基に、if文(else文)が追加されたのです。追加したのは他でもない自分自身です。こうすることで私たちは矛盾を解消してきたのです。

 

ほとんどの人は何か大切なことを教える場合、条件分岐について正確には教えてくれる機会は多くありません。教えてくれるのは、何の構文も使われていないシンプルなコード(考え方)だけです。そして、時と場所が違えば、同じ人から全く反対の考え方を教えられる時もくるでしょう。しかし、これを矛盾してるから、と受け流してしまうのは機会損失です。また今まで書かれていたコードを消して書き直す必要もありません。ただ、昔教わった考え方、今教わった考え方を、if文、else文に分ければいいのです。

 

初めから全ての条件分岐についても正確に人から教えてもらいたいと思う人もいるかもしれませんが、それは知的に甘えた態度とでも言っておきます。一つとしてそれは不可能です。まず条件分岐といっても、一言にここからここまでがOKとキッ貼り分かれているものではありません。そして、それほど複雑な考え方を全部一気に教えられても頭には残りません。

 

自分の頭で考えて書き込んだif文だからこそ自分の中に刻み込まれ、自分の考え方が構成されていくのです。ですから、あの人は矛盾している、とか簡単に言ってしまう前にif文をどうやって書き足せばいいのか、自分の頭で考えましょう。