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そして今日も考える。

深夜バスにドタキャンされて思ったこと

明日東京に物件を見学に行くということで、本日の深夜バスの予約をしていました。そしたら、「大雪で運休」との連絡が先ほど入りました。私はこのたった一通のメールで済ませてしまう会社側の姿勢に対して疑問を感じずにはいられません。

 

バスの予約をした後、我々がキャンセルをしようとすると、ほとんどの会社ではキャンセル料が発生します。1~2週間前のキャンセルであれば無料になることが普通になってきてはいるものの、予約当日に近づくにつれ、キャンセル料は膨大になります。

 

当然、会社側の意向もわかります。予約する、ということはその人にサービスを提供する代わりに、その人から利益を得ることを約束するわけです。そして、予約することによって、他の人から利益を得る機会を放棄することにも繋がります。すると、予約当日間近になって、その約束が果たされないとなると、他の人から得られたかもしれない利益まで奪われることになるので、キャンセル料として支払いを要求することになるのは、致し方ない側面はあります。

 

しかし、その思想に基づいてキャンセル料をとっているのだとしたら、逆の立場も想定するべきだと思います。例えば、今回の例では、会社側の都合で運休となり、予約がキャンセルされました。しかも、ドタキャンです。にも関わらず、我々に対する保証は何もないわけです。挙句の果てに、返金の手続きはこちらで対処しないとお金は返ってこないという。これが当たり前なのか、と落胆しました。明らかにフェアではありません。

 

会社に事情があるのもわかります。自然の力には勝てませんから、会社側の都合でキャンセルせざるを得ないときもあるでしょう。でも、事情を言い訳にして許してもらいたいなら、相手の事情を考慮するのがフェアというものでしょう。客だって、特別な事情で当日に予約をキャンセルせざるを得ないときがあります。というか、ほとんどがそれに該当するはずです。客のドタキャンは容赦せずにキャンセル料を剥奪する会社が、自分の都合が悪いときは何の保証もよこさないというのは何かがおかしくありませんか。

 

こういった変なことがまかり通るのは、会社の方が客よりも強いからです。なぜかというと、会社がお金をもらえなくて困る以上に、客がサービスを提供してもらえない方が困るからです。極端な話、キャンセル料を払うのが嫌ならば、バス会社を予約しなければいいのです。でも、それができないのは、サービス自体に需要があるからです。一般的に、インフラ業界はサービスの必要性が高いため、客よりも会社の立場が上になることが多いです。

 

これは接客業とは実に対照的な構図です。「お客様は神様」という謳い文句があったように、今でも客の立場が会社よりも上である傾向にあります。提供する食べ物の中に髪の毛一本入っていたら怒られるけど、客がグラスを割ってしまっても決して咎められることはありません。弁償もなく、挙句の果てに、怪我の心配までされるという素晴らしいオペレーションが当たり前になっています。私はああいった現場を見るたびに接客業では働きたくないなと思ったものです。

 

これらはどちらもアンフェアであるという点で同じです。本来、ビジネスとは、客が金を払って、会社がサービスを提供する、という契約の積み重ねに過ぎません。そして、金とサービスが同等の価値であると両者が判断した場合にその契約が成立するものなので、本来は対等であるべきなのです。接客業では、「お客様がお金を払ってくれているおかげで私たちが生活できる」というなんとも崇高な思想が植えつけられますが、裏を返せば、私たちがサービスを提供しているおかげで、お客様の生活が豊かになっている」わけです。どちらが偉いということはありません。

 

もちろん、もうすでに確立されてしまった格差を取り除くことは困難でしょう。そして、こういった格差があるからこそ、日本の接客業は世界的に優れたサービスへと変化したのも事実です。しかし、どちらか一方が偉いという格差のあるビジネスを目指すべきではないのかなと思いますし、会社の方が客よりも立場的に強いだけで成り立っているビジネスはこれから淘汰されて欲しいと切に願います。運送業しかり、不動産業しかり。