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そして今日も考える。

引越し料金の差異について

少し前に引越しの見積もりをネットで申請しました。移転先や家具の種類等の基本的な情報を入力すれば、ワンクリックで大量の引越し会社に見積もりの依頼できるんですね。(ちなみに価格ドットコムを利用しました。)これは便利。

 

凄かったのが、依頼した途端に一斉にかかってくる色んな会社からの連絡です。てっきり見積もり価格がメールで送られてくるものだとばかり思っていたので、驚きました。たぶん10社ぐらいに見積もり依頼が送られたはずですが、最初の3社以外の電話は無視しました。各々の会社に悪気はないはずですが、一度に電話がかかってくると迷惑ですし、対処しきれません。顧客対応という点で改善の余地がありますね。

 

ただ、メールで見積もり価格を送るだけでなく電話をかけてくるのは、やはり顧客を囲い込みたいからなのでしょう。素人目にはこの時期ならいくらでも需要がありそうなものであり、そんなに必死になることはないと思うのですが、引越し会社自体が多いため、競争が激しいのかもしれませんね。某大手の引越し会社さんは、当日に見積もり訪問のアポまで入れてきました。

 

そうやって囲い込んでいる割には、「今は繁盛期だから価格が高騰しております」などと言い出すんですね。なんか行動と言動が一致してなくないか?と疑問に思います。今日来ていただいたその大手引越し会社に関しては、ちゃんと見積もりをする前に最低でも20万はかかる、と言われました。別の会社からは五万程度の額を提示されていますけどと渋ったら、そそくさと帰って行きました。

 

実際の話、別の小さい引越し会社からは5万円を下回る金額を電話で提示されていました。その会社は電話で事細かに状況を確認し、見積もり金額を提示した挙句、こちらが言い出す前から価格交渉を提案し、かなり安めの価格に設定してくれました。

 

もちろん、事前にネットや知人からの助言によって、引越し会社によって全く値段が異なることは知っていました。一般的に大手の会社は高く、地元の小さい会社は安いと言われています。そして、実際見積もり金額からもそういった傾向が見られました。しかし、なんでこんなに価格格差が存在するのでしょうね。とても気になったので少し調べてみました。

 

まずは「信頼性」の違いです。例えば、パナソニックの電化製品と韓国の無名メーカーの安い電化製品、どちらが使っていて安心かというと、パナソニックの製品でしょう。韓国が勢いを増してきた今でさえ、日本の大手企業の電化製品にこだわる人も少なくありません。この信頼性の有無、すなわちブランド力が価格の差を生み出しています。

 

引越し会社に限っても同じです。CMや広告でよく見かける会社は信頼性が高いと判断され、どこの馬の骨ともわからない会社は信頼性に欠けるわけです。でも、それって完全にイメージ先行の偏見ですよね。例えば、韓国の電化製品の信頼性が低いという人は、韓国の製品を使ったことがあるのでしょうか。私はこの2年間使った白物家電は全て韓国製品で激安価格でしたが、全く問題ありませんでしたよ。

 

少なくとも、信頼性のために15万円も多めに料金を払うのはどうなんでしょうね。信頼性が高い=100%の安全が保証されているわけではないのです。そして、信頼性が低い=50%ぐらいの安全しか保証されていないわけでもありません。せいぜい、99%か90%の違いぐらいでしょう。もちろん、これを大きいと感じるか小さいと感じるかは自分次第ですが、ここに15万円分の価値が果たしてあるのでしょうか。

 

もう一つの理由が、広告、宣伝費です。おそらく、ここにかかっている金額が大きいのだと思います。で、ここで考えるべきは、広告や宣伝って何のためにやっているか?ということです。簡単ですね。会社の認知度を高めるためです。引越しを考えたときに、会社名を思い出してもらうためです。そして、これは顧客からの信頼性とも密接に関わっています

 

「15万円あげるから信頼してください」と言っても誰も信用してくれないでしょう。しかし、15万円分の広告費を導入すれば、少なくとも短期的に信頼を得ることはできるんですね。心理的なもので人間はよく目にするものや耳にするものに安心感を覚えます。そのため、あの会社はCMや広告で見かけるし安心だ、と感じるわけです。

 

ということは、15万円分は必ずしもサービスそのものの信頼性向上に使われているわけではなく、周知の信頼性の認知度に使われていることになります。つまり、これは「15万円あげるから信頼してください」というお願いをテクニカルにやっているに過ぎません。

 

問題なのはここからです。私たちに(便宜上)15万円分を渡すことで信頼性を獲得した会社は、その信頼性を逆手にとってサービスの一部として顧客から回収している、ということになります。顧客にとってはプラマイゼロです。会社には信頼性が残ります。

 

逆に、信頼性の認知度に資金を投入していない会社は信頼性の分だけ価格が安くなります。もちろん、その会社にはわかりやすい信頼性はありません。ですが、信頼できるかどうかを自分の頭で判断できる人にとっては会社が一方的に作り出した信頼性などは必要ないのです。つまり、会社側の都合で、信頼の認知度として払われた金額を、自分の頭で判断できる人が払う必要はないのです。

 

もちろん、今はサービスの実態が伴っていなければ、すぐに信頼性は落ちてしまう時代です。ですが、勝手に作り出された信頼性という幻想を鵜呑みにしてしまうと、思わぬところで損害が発生します。何が信用できて何が信用できないかを判断するため情報やツールはもうすでに普及しています。

 

確かに、信頼性の低い会社を選んで失敗するリスクはあるでしょうし、大手に比べればそのリスクは大きいのかもしれません。しかし、自らリスクを選択した方が損失のリスクは減らせることもあります。どのみち、100%の信頼性など存在しないのです。自分の中にちょっとした覚悟を持つだけで様々な損失を減らすことができます。