∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

指導にはレベルデザインの考え方を導入せよ

アルバイトをしていた頃、新人研修を長期間にわたって任されていた。だからといって、指導が得意ということはないし、むしろ今振り返ってみると、かなり至らない指導だったと思う。今になっても何が正しい指導であるかなんてぶっちゃけわからない。

 

多くの職場においても指導者というポジションを任せられる人はいるはずである。しかし、指導そのものについての指導(そもそも指導とは何なのか)について教えてもらう機会は皆無に等しいのではないか。そういうわけで、リーダーやマネージャーと同様、仕事が出来る人が指導が上手いわけではないことの方が一般的だと思う。

 

今の私は完全に指導を受ける立場であるが、指導を受ける立場としての自分、過去に指導をしてきた自分、それら2つの観点から、指導者に求められることを自分なりに考えてみた。

 

指導者には指導に入る前にまず考えなければならないことがある。指導される人がいつまでに何ができるようになれば良いのかを定義することである。残念ながらこの段階で指導に躓いてしまっている人は多い。

 

当然ながら、新入りがベテランと同じような知識やスキルを一日で身につけられるはずはない。しかし、指導者としてはなるべく速く一人前に育てたいと考えるのが一般である。すると、どうしても自分の持っている知識をひたすら教える、という指導法になってしまうのだ。

 

私も最初の頃はよくこの間違いを犯した。ただひたすら自分の言っていることを伝えたことに満足し、相手の理解度などそっちのけだったのだ。しかし、伝えたはずなのに、相手は全く理解できていない。そして、大抵の場合、指導者は理解していない相手に問題があると思い込むのだ。

 

しかし、これは大きな間違いである。相手のキャパシティを超える知識を短期間に詰め込もうとしてもできるはずがないのだ。指導者側の問題である。一度にたくさん教えることで、責任逃れをしようとしてしまっているだけ、すなわち怠慢である。

 

教え過ぎを防ぐためには、いつまでに何ができるようになれば良いのかを定義することである。これによって、今はまだ教えない、という選択が可能になる。もちろん、こういった損切りをすることにかなり抵抗のある人はたくさんいるだろうが、それが実は一番の近道なのだ。

 

ゲームにはレベルデザインという考え方がある。例えば、マリオブラザーズなどのゲームでは、1面が一番やさしく、後半に進むにつれてステージマップ自体が難しくなっていく仕様になっているのだ。このように徐々に難易度を上げていくことで、プレーヤーがゲームをしているうちに勝手に上手くなっていける仕組みをレベルデザインという。

 

ソーシャルゲームなどでも、最初にチュートリアルというモードが設けられえいる。そして、このモードでは選択できるボタンの数が限られている。最初から色んなボタンが選べると何をすればいいのかわからなくなってしまうからだ。徐々に選択できるボタンが増えていくのも1つのレベルデザインと考えてもよいと思う。

 

このように考えると、指導にもレベルデザインの考え方は有効である。最初は必要最低限しか教えないのだ。断っておくと、ここでの必要最低限とは、お客さんに不快感を与えない程度に、ではない。それではいきなりベテランを目指すという発想に繋がってしまい、同じ間違いに繋がってしまう。

 

新人が不十分であるところは指導者自身ないしは周りの人で最大限にフォローする。その中で、新人が確実にできることを増やしていくようにする。新人の成長がついてくるまでは、周りがフォローしていくしかないのだ。しかし、最低限の部分については一刻も速くできるようになってもらう。そのためにそこに焦点を絞って教育するのだ。

 

さて、今度は指導される立場になって考えてみよう。残念ながら、今の私の指導者はそのような教え方はしてくれない。先にも述べたが、即戦力になってほしい人に対して、できるだけたくさんの知識をできるだけ早く植え付けておきたいと考えるのが当たり前だからだ。

 

しかし、指導される側が指導者を責めてはいけない。指導されてもらっている立場のくせに傲慢だからいけない、というわけではなく、それでは何も事態は変わらないことが問題なのだ。そういうわけで指導される側にも対処法はある。

 

本質的には指導する立場でも指導される立場でも変わらない。必要最低限に絞るのである。指導者がたくさん教えてくる知識のうち、今の自分に最も必要な知識やスキルは何なのか?という視点で考えるのだ。

 

自分のキャパを考慮して優先順位をつける。優先順位の付け方は、頻度、重要度(影響度)、緊急度ぐらいを目安に考えればいいんじゃないかと思う。キャパオーバーの知識に関しては無視してもいい。もちろん、「この間も言ったじゃないか」と怒られるリスクは増えるので、それなりの覚悟はいる。

 

でも怒られたら、その時に覚えられるだろうし、また自分の中で優先順位付けができていれば、「そんなことよりもこっちの方が重要だ」と指導者がアドバイスをくれることもある。必要最低限に絞っておくことで、着実に成長していくことができるのだ。