「電話応対は新人の仕事」という謎めいた慣習
新人が電話応対をするのは当然だ。おそらく、そう考えている人は多いだろう。研修期間に電話応対を教わった時も、マナー講師の方は「電話応対は新人の仕事だからよく練習しておくように」と言っていた。
しかし、なぜ電話応対が新人の仕事なのか?、についての説明は一つもなかった。もちろん、その考え方が間違っているとまでは言わないが、当たり前の常識と考えるのは謎である。
新人が電話応対をするのは非効率的
私も配属されて約一ヶ月が経ち、ようやく電話に出る機会が増えた。本社へ出勤した時は1日10件以上の電話が来ることもある。内部からも外部からも電話がかかってくるわけであるが、その中に私宛の電話は一件もない。当たり前のことであるが、戦力外の新人に用のある人などいないのだ。
これは、新人が電話を取ると、別の誰かに取り次ぎをしなければならない確率が最も高い、ということでもある。同時に、目的の人に電話が繋がるまでの時間の期待値は大きく(長く)なる。つまり、新人が電話に出るのは最も非効率的である、と論理的に説明できる。
新人が電話応対するメリット
では、新人が電話応対をすることに何のメリットもないのかというと、それは違う。メリットを享受する人がいるから悪しき慣習は無くならないのだ。今回の事例で言うと、電話によって仕事の邪魔をされたくない中堅社員、管理職クラスの人間たちがメリットを享受している。
非効率的なのは、新人と電話をかけてくる人(お客様)にとってのみであり、よく電話がかかってくる人(中堅社員)にとってはさほど非効率的にはならない。むしろ、自分に取り次がれる電話以外は無視して良いのだから、時間を効率的に使うことができる。
お分かりいただけただろうか。電話応対が新人の仕事でメリットがあるのは、実は大切なお客様のためではなく、上司たちの利己的な都合によるものだったのだ。にも関わらず、何の悪気もなく「電話応対を新人がやるのは当たり前だ」なんて言っているのだから年功序列って恐ろしい。
携帯電話に掛ければよいのでは?
お客様、新人、中堅社員その全てにとって良い選択肢となり得るのは、携帯電話だろう。ただし、個人用の携帯電話の番号を仕事関係の人間に晒すのを嫌がる人は多いはずだ。セキュリティの問題もあるし、プライベートに仕事が侵食してしまう恐れもある。
社内用携帯を一人一人に配布すればよいのだが、それではコストが掛かり過ぎるのだろう。営業など、会社にほとんどいない人なら正しい判断と言える。だが、常に会社にいる人のためにわざわざ携帯を持たせたところで、コスト高の割にメリットは電話取り次ぎの僅かな時間だけ、では採算が取れない。
楽天でんわ、LINEの進化に期待
最近は、電話アプリが増えている。その一つの「楽天でんわ」は、ほぼ携帯の通信回線なみの音声クオリティで、しかも通話料金が半額になるサービスである。一般ユーザ向けのアプリではあるが、既にビジネスの場でも利用されている事例もあるようで、今後も利用者の増加も期待される。
LINEの通話機能は、音声や通信の不安定さがあるため、企業向きではないが、電話番号を晒す必要がないのは大きなメリットだ。通話機能が向上すれば、個人用携帯で気兼ねなく連絡を取り合うことも十分可能だろう。
新人が考えるべき電話応対のメリット
さて。このエントリでは新人が電話応対することに大きなメリットはないという主張に重きを置いてきた。ただし、「なんで新人が電話応対しなくちゃいけないんですか?」などとは絶対に言わないように。それが社会というものだし、ただ電話応対から逃げたい奴、みたいなレッテルを貼られて社会に完敗するだけである。聞いたところで、論理的な説明は存在しないのだから一つも意味は無い。
むしろ、あなたが新入社員であるなら、電話応対をすることのメリットを考えた方が実利的である。例えば、関係者の名前を覚えてもらうことができる、自分の名前を覚えてもらうことができる、頑張っているアピールができる、言葉遣いの練習になる、と実は様々にある。
これらの理由は、年長者たちが、新人が電話応対するべき理由としてよく挙げる例でもある。利己心からそういったことを述べている点については癪だが、意見自体は間違っていない。どうせやらされるのなら、主体的にやろう。(ちなみに私の部署は他の若手社員もガンガン取ってくれるので、積極的に取らずとも問題視はされないのだが。)