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∑考=人

そして今日も考える。

最新パチンコ屋偵察記①

パチンコ

今日は買い物に行ったついでに、パチンコ屋に行ってきた。といっても、別に遊戯をしたわけではい。業界を探るべく視察に行ったのだ(本当は喫煙所代わりに使っただけ)。

 

1000台クラスのそこそこ大手の郷ひろみがCMをやっていた某パチンコ屋である。一通り回って、観察していると様々な発見があった。その一つはスマートシステムが完備されていることである。スマートシステムはとても便利なシステムであるが、普及率はいまだ低い。その理由について考えてみる。

従来の換金の仕組み

大昔は、大当たりした出玉がお客さんの席の後ろに積まれていき、積めなくなるほど溜まったら、別の目立つ場所に置く(通称別積み)のが一般的なオペレーションだった。そして、お客さんが遊戯を辞める時にまとめて計数機(玉数を数える機械)に玉を流し、その玉数が書かれたレシートをカウンターで文鎮と交換し、それを景品交換所に持って行くことで現金と交換する、というフローである。

 スマートシステムの換金フロー

スマートシステムとは、各台計数機などとも言われる。今までとは異なり、パチンコ台自体に計数機がついており、玉が放出される時に計数されるので、出玉が即時にデータ化される。遊戯を辞める時にデータの入ったカードが従来のレシート代わりになるので、そのままカウンターに向かうことができる。

スマートシステムのメリット

お客さんのメリットとして、交換や移動の時にもわざわざ店員さんに声をかける必要もない。よって余計な待ち時間が発生しない。 店員にとっては交換や移動の手間が省けるだけでなく、業務の大半を占める箱の上げ下げ動作も不要となる。冗談抜きに、スマートシステムがあるだけで、ホール店員の業務負担は80%くらい減る。つまり、店側にとってもお客さんにとってもいいことだらけのWinWinシステムなのだ。

スマートシステムのデメリット 

このシステムは今となってはそれほど真新しいものでもないのだが、実はまだ普及率はそれほど高くない。メリット尽くしの施策などありえない。様々なデメリットはそこには存在する。

1. 出玉演出

一つ目は、出玉演出である。私はこれについて少し懐疑的ではあるものの、店に入った時に出玉がたくさん積まれていた方が、アツい店であるという印象をお客さんに与えることができるのはほぼ間違いない。

 

私もユーザーとしてパチンコ屋を利用するときは、出玉が多く積まれているコーナーに座りたい、と思う。スマートシステムの場合は、こういった判断材料をお客さんに提供することができない。その結果集客力が落ちてしまうことはかなり危惧されている。

2. 遊戯方法の変化

二つ目は、パチンコの遊戯方法自体の変化である。人間は得てして、変わるのが好きではない生き物だ。しかし、スマートシステムの導入は、パチンコという種目自体の在り方を変えてしまう。たとえ、本質的なことは変わっていなくても、メソドロジーが変化することで、変化を感じる人は多いものだ。そして、中には全く本質的ではない部分に対して楽しみを感じている人もいる。

 

例えば、玉の盛り方などが該当する。先に述べたように、従来であればドル箱という容器にパチンコ玉を入れて、ひたすら積んでいた。そして、パチンコ好きな人ほど、ドル箱一箱にパンパンに玉を詰める(カチ盛りとかいう)傾向がある。店員にとっては実に迷惑な話だが、みんなやたらと玉を積めたがるのだ。

 

働いていた頃、興味本位でお客さんになぜカチ盛りをするのかと聞いたことがある。いくつか理由があったが、私が一番納得した理由は、カチ盛りでないとダサいからというものだ。たくさん出玉を出して、別積みまでされていても、その中身がスカスカだとダサい。というのも、パチンコ屋の中では、たくさん出玉を出している人はカッコイイという謎の価値観があるからだ。

 

そういった価値観から派生して、いかに一箱にたくさんの玉を盛ることができるかを楽しんでいる人もいる。ただ単純に、玉をジャラジャラ触る感触が好きだ、という意見を持つ人もいる。これは全くもって遊戯の本質とは違うが、もっと人間的な欲求である自己顕示欲を満たすことに貢献している。しかし、スマートシステムが導入されれば、従来の方法論に付随する楽しみはなくなってしまう。

3. 雇用問題

三つ目はアルバイトの雇用に関する問題である。私はこの理由こそが最大のボトルネックになっていると思っている。スマートシステムを導入すると、圧倒的に業務量が減ることは先に述べた。仕事が減るので、人件費の削減が可能であり、控えめに言っても50%は削減できる。言葉から受ける印象と同様、企業側にとっては一般的にはメリットとして位置づけられている。

 

しかし、アルバイトにとっては全くメリットではない。2人のうち1人が路頭に迷うことになるからだ。パチンコ屋で働いている人はそれなりに複雑な生活事情を抱えている人が多い。また、収入も多いのでその財務基盤がいきなり失われるようなことになると深刻な問題になる。

 

そんな人達を人件費の削減という理由で、バッサリ解雇することは事実上不可能である。一生懸命仕事をしている人を業務上の都合でいきなりクビになどできないし、少なくとも店舗配属のエグゼクティブ層レベルの人は、従業員の解雇を心から望んではいない。日本ならではの思想とも言える。

 

しかし現状、どのパチンコ屋でも人件費削減は進められている。ただ、そのやり方は1人の人間をバッサリ切る、というものではなく、みんなの出勤日数を少しずつ削る、というやり方が主流だ。ただ、スマートシステムを導入すると、人件費削減を分割して実施することはできない。

 

また、最近のパチンコの顧客層はヘビーユーザーが多く、しかも低単価(1パチなど)を好む傾向がある。そして、年齢層は高齢化している。このことから導かれる結論としては、パチンコのギャンブル性を求める人ではなく、パチンコ屋のプラットフォーム性を求める人が増えているということである。

 

そして、プラットフォーム性を維持するために大きな役割を果たしている一つの存在が店員である。そして、パチンコ屋は総じて、社員よりもアルバイト店員の方が人数的に多い。そんなアルバイトを大量に解雇することは、集客の観点でも良くないという正当な理由もあり、人件費の削減に踏み込むパチンコ屋は少ない。

まとめ

長期的に見れば、スマートシステムは普及していくだろう。しかし、その普及スピードは遅い。なぜならば、店舗新設のタイミングでの導入が基本となるからだ。私が今日視察にいった店舗も2年ほど前にできた比較的新しい店舗だった。

 

スマートシステムが普及しないのは、従来から続いている店舗へのスマートシステムの導入が部分的なものに収まってしまっているからだ。そして、システムの利便性が不十分だからではなく、現場レベルの癒着が障害となっているからである。問題の種類でいうと例えばそれは、公務員の業務がIT化されないのとほぼ同様の理由である。

 

効率化を考えるのがシステム屋の役割ではあるが、効率化すれば誰もが皆ハッピーになるわけではない。様々なステークホルダーを考慮し、ある対象業務を効率化することで誰がどんな不利益を被るか、それはどんな不利益なのか、そして、その不利益を解消するために何ができるのかまで考えなければ、良いシステムは提供できない。