∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

「理解する」ことが何なのかをガッツリ説明してみた

おそらくこの世に理解力がない人はいないし、理解力が必要のない人もいません。ただ残念なことに、理解力は人によって様々であるため、理解力が不十分と判断される人はいます。

 

そもそも理解するとは一体どういうこと何でしょうか。辞書には下記のよう述べられています。

  1. 物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。
  2. 他人の気持ちや立場を察すること。

 確かにこれらは「理解する」の意味としては正しいです。でも、こういう書き方をされた方が何となくわかりにくいと思うのは私だけでしょうか。平易に説明すれば「理解する」とは「わかる」ことです。

 

これはもう色んな教育番組で引用されていると思いますが、「わかる」とは漢字で書くと「分かる」と書く、「分かる」とは「分ける」こと、すなわち「区別する」ことであるというニュアンスが含まれているんです。

 

これは私の仮説ですが、一般的に自分の感覚と結び付けられるものは理解しやすいです。頭で考えなくても区別することができるからです。逆に感覚に結び付けられる言葉を説明しようとすると余計わかりにくくなってしまう傾向があります。

 

例えば、「痛い」とか「うるさい」の意味がわからないという人はいませんよね。言葉としてうまく説明するのは難しいかもしれないけど、その言葉の意味するところは誰しもが理解できるはずです。

 

また、「テレビ」や「ネコ」が何なのかわからない、なんて人もいないでしょう。それは物理的な大きさを持った実体であり、目で見ることができる、すなわち視覚と結びついているからなのです。

 

ほとんどの人が理解に少し苦労するのは実体がなく抽象的で概念的なものであることが多いです。「抽象」とか「概念」という言葉自体も直接自分の感覚とは結びつかない、理解しがたい言葉ですし。

 

これに関して言えば、具体例を考えてみればいいんじゃないかと。例えば、先ほど「テレビ」や「ネコ」がわからない人はいない、と言いましたが、「テレビ」や「ネコ」というのも実は概念だったりします。

 

なぜなら、テレビという言葉はたった一台のテレビのことを指すのではないし、自分が飼っているネコだけがネコではないからです。テレビ局から放送される映像データを出力するデバイスの総称が「テレビ」であり、ニャーと泣く髭が生えた小型の四足歩行動物の総称が「ネコ」なんですね。

 

私たちがこれらを理解し、言語化して説明することができるのは「テレビ」という概念に含まれる具体的な物体や、「ネコ」という概念に含まれる具体的な生物を複数見てきた中で、共通する性質が何なのかを何となく認識しているからです。

 

実はここまでの話自体が「概念」という言葉の具体例にもなっています。ついでに言っておくと、この「概念」をちゃんと理解していれば、英作文を書くときに冠詞(a や theなど)がつくかつかないかを簡単に判断できます。(実際に正しい文がすらすら書けるかは別として。)

 

『私の家にはテレビがある。』を英訳すれば、『There is a terevision in my house.』となるし、『最近のテレビは安い。』を英訳するとすれば、『Resently, terevision is cheap.』となります。前者のように、概念の中に含まれるまさにその一つの物体としてのテレビを指す時は冠詞が前につくし、後者のようにテレビという概念を総称して指している場合は冠詞はつかないのです。

 

話がかなり脱線してしまいましたが、概念的に物事を捉えられるようになると、物事を本質的に理解した状況に近しいところまで行くことができるんじゃなかと個人的には思っています。

 

先ほど、私はテレビの説明として、「テレビ局から放送される映像データを出力するデバイスの総称」としました。ただし、ある人は、「電源を付けると映像が出力される画面の総称」だと思っている人もいるかもしれません。

 

説明というのはどうしても簡潔にせざるを得ないところがあるので、上の二つの説明のどちらも一概に間違っているとは言えません。ただ、それがテレビに対する認識の全てであるとすれば、残念ながら本質的には理解できていないということになります。

 

例えば、「テレビ局から放送される映像データを出力するデバイスの総称」という説明であれば、パソコンもテレビだということになってしまいます。ただし、パソコンはテレビとは違いますよね。

 

また、「電源を付けると映像が出力される画面の総称」という説明であれば、ディスプレイもテレビであることになってしまいます。ディスプレイとテレビについても、やっぱり同じではないはずです。

 

パソコンとテレビ、テレビとディスプレイ、この違いが何なのか。それを知る、すなわち区別することこそが本当に理解するということなんです。これらの違いを考慮した上でテレビを説明するとすれば、「テレビ局から放送される映像データを出力するための専用端末」ぐらいでしょうかね。これでも例えばテレビの内部構造を知る人からすれば、極めて浅はかな理解ということになりかねませんが。

 

このように、言葉を理解するというのは、その正確で詳細な絶対的な意味を知ることよりも、むしろ他の言葉と比較した場合の相対的な差異を知ることが重要です。そもそも言葉なんて識別コードみたいなものですから。

 

そのため、常に類似した言葉と比べて、認識をアップデートしていく必要があるんですよね。ただ、闇雲に分類しようとしてもうまくはいきません。それができないと理解力が乏しいと言われてしまいます。

 

この理解を非常に助けるのが概念(カテゴリー)と抽象度(レイヤー)による区別です。理解力の高い人間は意識的にせよ無意識的にせよ概ね下記のような枠が頭の中に存在するんじゃないかと思います。

 

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いわゆる階層構造ですね。一つ一つの丸がある概念を表し、線で繋がっている同じ高さにある概念は抽象度が同じ(左図参照)であり、線で繋がれた〇は上位に位置する概念(上位概念)に含まれるイメージです(右図参照)。

 

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このような枠組みに沿って考えると、テレビとパソコンは例えばこんな風に配置されます。

 

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上図から読み取れるのはレイヤーは同じだがカテゴリーが異なり、そしてどちらも家電という上位概念に含まれている、ということです。ただし、ここで大切なのは、上の通りに分類するのではなく、何が同じで何が異なるのかを区別できるように配置することです。

 

テレビとディスプレイについても同様に考えてみるとどうなるでしょうか。例えば、私ならこんな風に考えます。

 

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つまり、テレビはディスプレイというカテゴリーに含まれるが、レイヤーがディスプレイよりも低い(より具体的)という分類です。数式で表現すると、テレビ⊂ディスプレイ、です。

 

いやいや、これ間違ってるっしょ!?って思った人もいるんじゃないすかね。私は一瞬下図のような配置と迷いました。

 

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ディスプレイはテレビの一部だし、PCの一部でもありますよね(正確には違うので点線にしてます)。こう考えると、テレビ⊃ディスプレイと先ほどは反対の包含関係になってしまい矛盾します。

 

正直どっちでもいいかなーとは思います。ただこの分類の場合、カテゴリーではなく構成要素で分類しているんですよね。確かに構成要素としてはディスプレイはテレビの一部と考えていいと思います。

 

しかし、カテゴリーとしてはやはりディスプレイの方が上位の概念になるかと思われます。その心は、「テレビ局からの放送を出力することに特化したディスプレイ」=「テレビ」と考えることができるからです。「〇〇なディスプレイ」という風に具体的な説明が付加されたもの「テレビ」であるなら、ディスプレイよりもテレビの方が具体的な(レイヤーが低い)はずですね。これも一つの考え方ですが。

(※「テレビ局からの放送を出力できないテレビ」=「ディスプレイ」だから逆の包含関係が成り立つという解釈に関しては反則とさせて下さい)

 

こうやって言葉の意味を覚えていくというよりは、理解するとは、言葉の相対関係を頭の中に位置づけていくイメージです。そして、今回は言葉の理解を対象にしてきましたが、他人の気持ちとか世の中の事象とか解釈とか、あらゆる理解について共通で使えます。

 

例えば、良い教育や良い書籍は体系立てられているとよく言われますし、その通りだと私も思います。この体系立てられているというのが、まさにこの階層構造を意識して説明されている、ということです。

 

学校の教育では、まず教科ごとに教育が分類されていますよね。さらに各教科で範囲が分類され、各範囲の中に色んな単元がある、という風になっています。だから理解しやすい形で提供されているのです。(だから誰でも理解できる、というわけではないですよ。)

 

コンサルのフレームワークにもこのような階層構造型の考え方は複数存在しますし、システム開発においても階層構造型のモデルは沢山登場します。自分は記憶力がないなぁと思っている人ほど是非とも身につけておくべきでしょう。