∑考=人

そして今日も考える。

社内ニートになる日もそう遠くないかも

今は自分が何の仕事をしているのかわからない。何のために仕事をしているのかもわからないし、何のプロジェクトに携わっているのかもわからない。そもそもプロジェクトの定義とは、特定のサービスもしくは成果物を創出するための有期活動のことであるが、私がかれこれ2年近く携わってきたプロジェクトは今になっても尚、終わりが見えない。

 

前にも述べたが、少し前に私のプロジェクトはリスタート(正確にはリリスタート)となった。要するにやり直しである。ただ、やり直しするのも確定したわけでもない、というのが正直なところで、政治的な力、癒着により、契約成立前に検討に着手している、という状態であった。そして、契約が締結される見込みは私の感覚的にはフィフティー・フィフティーぐらいだ。

 

そんな不安定な状態の中、私たちは基本検討をすすめ、見積もりを提示することになったわけである。しかし、ここでまた事件が発生した。見積もり提示額が当初の超概算見積(※)に比べて約2倍程度の金額に膨れ上がってしまったのである。

※概算見積もりとは、お客さんの要求が仕様化される前に、提示する見積もり額のこと。当然ながら正確な数値とはならない。

 

結局現在の額でお客さんに提案することは非常に難しいという営業側の判断もあり、1ヶ月間の検討の末漸く固まりつつあった仕様を再度検討し直さなければならないことになった。またやり直しである。

 

もちろん、見積もり額の倍増には色んな背景が潜んでいる。そもそも検討を進めている中で新しい要件が追加になったこと、またお客さんと検討を進めている我々は見積もり作業をするわけではないので、金額を意識した検討を行なっていなかったことなどである。

 

しかしながら、一番の問題であったのは、流用と再利用の違いをお客さんと我々が理解しきれていなかったことにあると思う。

 

まず今回のリスタートの前提として、私たちはこの一年間以上続けたプロジェクトで、試験途中まで完了レベルのシステムは既に出来上がっていた。もろもろの事情によって、今まで構築してきた仕組み自体は残しつつ、少し接続先のデータセンタを変更する、という試みが今の検討なのである。

 

喩えて言うのであれば、元々子供用に作ろうとしていた洋服を、デザインそのままに大人用に変更しようという取り組みのようなものだと考えて差し支えない。つまり、子供用サイズを大人用サイズに変えるだけで良い(大して大変ではないだろう)というのが、お客さんの見解であり、さらに言えば、我々もそんな風に考えていた節があった。

 

しかし、システムというのは細かい一つ一つ部品の強い依存関係でできている。少し論理的矛盾も許されないため、少しの変更であっても、その影響範囲というのは巨大に膨れ上がるものなのである。

 

影響範囲が大きい以上、品質的に問題がないことを保証するためには、その影響があるであろう範囲に対して試験を実施する必要がある。そして、巨大な範囲の試験を行うということはそれだけの工数が必要になるのだ。

 

つまり、一度は作ったものとは言え、完全に流用できるわけではなく、一部を変更して使用するために、言葉としては再利用ということになる。完全流用であれば、品質は保証されているが、再利用であれば、品質の担保はゼロから必要になってしまう、というのは前述の通りである。

 

概算見積もり時には、流用という頭で考えていたが、ベンダさんがプログラムを作成する立場として見積もった結果、明らかに再利用という考え方にならざるを得なかったのであろう。

 

さて、そういった現実を踏まえ私たちは何とか当初の見積もり額に抑えて提案しなければならない。そうでなければ受注は難しいだろう。とは言え、実行可能な方法が果たしてあるのだろうか。

 

一つは品質を諦めることだろう。当然品質は担保されるべきであるが、最低限のレベルまで削ることでしか対応はできないんじゃないかと思う。プログラムの規模を抑えたところで、工数が抑えられるわけではない。

 

二つ目としては、要件を削ぎ落とすことである。開発スコープを減らせばシンプルに工数は下がる。もはやそのぐらい大胆なことをしなければ、調整不可能な誤差が既に発生している。

 

三つ目は一番難しい選択かもしれない、そもそも今回の開発はやらない、という選択をすることである。正直私はこれが一番良いと思ってしまっている。そもそも事業化が懸念されたシステムであることは皆薄々感づいているし、このプロジェクトが上手く行ってもそれがお客さんにとって本当に喜ばしいことになるとは思えない。

 

サンクコストに執着してしまうのは人間の性であるが、このタイミングでスパっと切り捨てるという選択をうちの会社としてするのもありだと思う。

 

ただ三を選択してしまえば、私のプロジェクトは失敗したということになり、私の仕事も無くなってしまうという問題はあるが、まぁその方がもしかすると自分のためにはなるのかなーなんてことを考えている。