∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

SIは他社に任せるな

経営コンサルタントという職業がある。直訳は経営の相談役。顧客企業や経営者から依頼を受けて、経営上の問題を解決するための支援を行う職業だ。しかし、コンサルタントが書いた本を読んでいると、実行可能な経営戦略を立てて提案するのが彼らの仕事のように思う。経営者はその提案を受けて単純に実行するだけ。そんな風な印象を受ける。

 

経営コンサルタントという職業を認知してからずっと思っていたことがある。経営者なんていらなくね?極端な話ズブな素人でも、こういう業界に対して仕事がしたいから何とかしてくれ、と経営コンサルタントに依頼すれば、高額の費用はかかるにせよ、こういう戦略でこういうことをすれば良いのでは?という提案が来る。経営者はその提案に対してただ判子を押すだけでいい。経営者の価値って何なのか。

 

学生の頃は、経営コンサルタントというとすごく優秀で、華のある職業のうようなイメージを抱いていた。しかし、社会に出てから色んな方からよく聞くのは、経営コンサルタントの提案が成功に繋がることは少ない、ということだ。もちろん、それが真実7日はわからない。でもそれは強ち間違いでもないのだろうな、と最近は思う。

 

我々はSIビジネスをしている会社であるが、SIも昨今は経営や事業と密接に関係してくることが多い。一昔前であれば、作業の効率化がメインだったのだろうが、今はシステム無くしてはビジネス自体が破綻してしまうものが多い。

 

例えば、フェイスブックなどのサービスだってIT無くしては成り立たない。もちろん、ITを使わなくても同じようなサービスを提供することはできるのだけれど、ITが無ければ、友達申請はダイレクトメール(はがき)を用いるために数日かかったり、記事を投稿するのも、全国の友達に手紙を送信するなど恐ろしく非効率になるため誰も利用しないだろう。ITなんて単なる効率化の道具でしかないが、効率化もレベルが極端に上がればそれ自体が別の価値を生み出すのだ。

 

そして、近年のビジネスは極端な効率化を前提に作られたものが多い。だからこそ、SIと経営は切っても切れない関係にある。しかし、日本のほとんどの企業は、このSIを他社に丸投げするスタンスを取っている。日本にはそういうSIを生業とした企業が沢山あるからだ。(無論、私もそんな会社に勤めている一人である。)

 

でも、SIを他社委託する企業こそ、SIの重要性をもっと理解しなければならない。できることなら、自前で作るか、あるいは本当に支援を仰ぐような形にするべきだ。SIerに経営の根幹となるシステム作りを任せる、というのは他社に経営の主導権を渡すぐらいのものだ。

 

SIを他社に任せるのが何故危険かというと、まず一つがゴールの不一致である。通常、SIerにとってSIプロジェクトの成功とは、お客さんの要望を満たすシステムを期限内に、限られた予算内でつくり上げることである。なぜならそれを実現すれば自分たちのビジネスは成功するからだ。

 

しかし、SIを発注するお客さんのゴールはどこにあるのだろうか。それは出来上がったシステムを稼働することによって、目標売上を達成すること(少なくともシステム開発の投資金額を回収する利益を売り上げること)である。逆に言えば、目標売上を達成するほどの効果がないシステムであれば、作らない方が良かった、すなわちSIプロジェクトは失敗ということになる。

 

真相は定かではないが、上記の違いを踏まえていれば、SIerが掲げるプロジェクトの成功率と、お客さんが成功だと考えるSIプロジェクトの数には大きな乖離があるのではないかと思う。少なくとも、私の担当のSIプロジェクトは、SIerとしては成功しても、お客さんにとっては成功ではなかったと思えるものがいくつも存在する。経営コンサルタントがよく失敗する、という話も同じような話なんじゃないだろうか。

 

はっきり言うと、これはお客さんが悪い。もっと関わっていかなければならない。別にシステムの細部の作りまで考える必要はない。そこはむしろ専門化に任せるべきだ。しかし、そもそも事業戦略としての妥当性や、システムを作った上で何を実現したいのか、どんな新しい価値を提供したいのか、さらに一歩踏み込んでシステムを作ることによって業務の流れ(業務フロー)をどのように改革したいのか、そういうことはお客さんが積極的に考えていくべきだ。残念ながら、発注先であるSIerだけで考えることは知識的にも困難だし、先に述べたゴールの違いからもついつい後回しになりがちだからだ。

 

でも実態として、ほとんどのお客さんは、SIerに対してもっと業界や業務知識を求めてくる。つまり、お客さんと同等の知識を持った上で、システム開発を行えということだ。もちろん、SIerの一社員としてはそう努めるべきなのかもしれない。でも、ほとんどの人にとってそんなことは非常に困難だし、それが全てのSIerにできるなら、お客さんがビジネスをする必要はない。SIerがお客さんのビジネスを買収した方が合理的だ。あくまでお客さんの経営に関してはお客さんが考えるべきだろう。それがプロとしての誇りなんじゃないだろうか。