∑考=人

そして今日も考える。

派遣を雇えば日本の生産性は上がる

日本人は行動の判断条件がノットイコールで考える人が非常に多い。例えば、「今日飲みに行く人ー!?」と聞かれたて、まず考えるのは、そこに行きたい理由(行きたいと思っていた居酒屋など)があるか、ではなく、そこに行けない理由(別の予定など)だろう。そして、断る理由がなければ行く。こういう思考プロセスの人が非常に多い。

 

恋人との付き合いとかもそうだ。一旦付き合い始めると、付き合う理由があるから付き合い続ける、ではなく、別れる理由はないから付き合っている、という人が多い。結婚生活とかも同じだろう。もちろん、実際はここまでシンプルな結論ではないが、総じてこのような傾向が強い。

 

これは労働スタイルについても同じことが言えて、明確な理由があって雇っているわけではないけど、特にパフォーマンスが悪いわけでもなく目立った失敗が無ければ、原則解雇されない。辞めさせる理由がなければ辞めさせないのである。だからこそ、赤字になった(辞めさせる理由ができた)途端に、大量のリストラ、自主退職を募るのだ。本来なら、赤字になったとしても価値のある人間なら雇っておくべきなのだ。

 

私はこのような日本人の思想が日本の生産性に悪影響を及ぼしている気がしてならない。日本の労働生産性はOECD34ヶ国中21位と、先進国の中では最低クラスである。労働生産性とは、付加価値÷従業員数で算出されるメトリクスであるが、時間あたりの生産性が低いことが全ての現況であることは日本社会にいる人間なら容易く想像できるだろう。

 

で、日本人の生産性が低いのはなぜかというと、それは派遣を雇わないからだ、というのが私の仮説である。

 

私の担当には派遣社員は一人もいないが、私たちが高い賃金をもらってやるほどの価値はない仕事は山程ある。ポットのお湯を入れる。掃除や片付けをする、PCの台数を数える、座席の移動の準備をする、印刷をする、会議室のセッティングをする、ワイヤーロックの鍵を解錠する、などなどの雑務だ。どこの会社でも同じような話はあるだろう。

 

実は私の担当でも過去に派遣社員の雇用が検討されたこともあるらしいが、結局派遣に頼んだ方が予算が高くつく、という結論で終わってしまった。確かに直接的には派遣を雇ったほうが当然費用は余分にかかるが、果たしてその波及効果まで考慮されていたのだろうか。

 

私たちみたいに、今この世にないものを売る会社は、始めに受注額が決まる。つまりまだ何も作っていない時に売上が決まるのである。ここまでが営業の仕事だ。そして、これを売ります、というのが決まった後、開発部隊がそれを作って納品する。そして、その時に報酬を手にする仕組みになっている。

 

すると、初めに売上が決まっているのだから、利益を確保するためには支出を減らすしかない、という構造になる。特に日本のように時間に縛られた労働形態では、正社員の給料もほぼ固定費であるため、あえて派遣を雇って支出を増やすよりは、正社員の労働時間の中で吸収した方が合理的に思えるのだ。

 

しかし、これは長い目で物事を見ていないし、開発部隊は利益に大して何の貢献もしていないという考えに基づいた判断である。例えば、派遣を雇うことになって、本業に集中できれば、より短期にシステムを作ることができるし、より品質の高いものを提供することができる。社員のモチベーションだってきっとあがるはずだ。

 

良いものを作れるようになれば、営業だってもっと積極的な提案ができたり、あるいは賃上げ交渉ができるかもしれない。あるいは顧客を通じて別の会社からの受注に繋がるかもしれない。こんな風に実は開発の成果が営業活動に繋がることだってある。

 

近年は、非正規社員が4割を超え、規制がかけられたりもしているが、派遣社員契約社員は数%しかいない。そもそも、非正規社員が増えることの何が問題なのかわからない。そもそも会社が変わること自体は別に不安定でもなんでもない。派遣社員でも安定した需要があれば、不安定ではなくなるのだから、もっと派遣や契約社員(特に雇用する側)を推奨したほうがいい。むしろ今の時代にはそういう働き方の方が合ってる。

 

まぁ、日本みたいに、「これだけの労働力がかかったからこの価格」という決め方をしている限り、本当の意味での生産性はいつまで立っても上がらないかもしれないけれど。