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そして今日も考える。

パチンコホールの未来を考える

地元に帰ってくると、必ずといっていいほどパチンコ屋に足を運ぶのだが、パチンコホールほどIT化が進んでいないと思う場所も少ない。数年前と大きく変わった点を感じることがない。

 

もちろん、周辺機器やパチンコ台は進化を遂げていることはなんとなくわかるけれど、結局従来の延長戦上の進化でしかないように思う。そうやってミニマムな進化を続けてなんとかお客さんを食い止めているのだろう。

 

とは言え、パチンコ業界の市場規模はやはり減少傾向にある。近々、MAXタイプのパチンコ台にも規制が入るため、更に集客力が落ちることも懸念される。法律でビジネスを規制される中、パチンコを生き残らせる方法はあるのか。それを今回はテーマにしたい。

 

これは私の予想だけれども、ほとんどのパチンコ屋さんは、「いかにお客さんに来てもらうか」を考えている。昔のようにお客さんが沢山入るようになれば、後は釘の調整でなんとでもやっていけるからだ。

 

そのために接客力を向上させたり、低玉貸台を充実させたり、綺麗な空気、分煙にも対応、あるいは漫画コーナーの設置という変化を遂げた。少なくとも、こういった努力のお陰で、元々はパチンコ屋に来なかったよな層の人たちも来るようになったとは思う。お客さんの満足度も確実に上がっている。

 

でも、市場規模は上がらない。業界全体で起こっているのは、小さい店舗が続々と閉鎖し、大きい店舗を持つチェーン店のみが何とか生き残っている状態だ。ヘビーユーザが少なくなったことにより、客単価が低下してしまったのだから無理もない。

 

確かに、接客の向上や漫画コーナーの設置などは客単価の向上を目論んでいる節もあるが、大きな効果があるのかは誰にもわかっていないはずだ。そして何より、客単価が上がってしまうと法律により規制される、という構造が出来上がってしまっているので、客単価を上げることを目指してはいけないのである。イタチごっこの繰返しが続くだけである。

 

そもそも、パチンコというギャンブルの市場規模が30兆という過去の時代の方がどうかしていた、と考えるべきである。つまり今になって漸く適正な市場規模に落ち着きつつあるのだと。であれば、売上を回復させる、というのはナンセンスであり、今本当に考えなければならないのはコストカットなのだ。今の売上でも経営を成り立たせるための方法を考えなければならない。

 

今のIT動向的には、もっぱら攻めのIT投資(新たなサービスを生み出すためのIT)であるが、パチンコホールに至っては削れるとこだらけに見えるので、守りのITを導入するべきである。

 

過去に守りのIT投資が功を奏した例として、各台計数機システムがある。出玉の計数機が各パチンコ台に設置されているため、従業員の人件費を大幅にカットできる。初めに導入する際は、出玉感が減ることに躊躇する声もあったが、蓋を開けてみれば今はほとんどの店舗で当たり前のように導入されている。差し詰め、演出効果増幅よりも人件費削減の方が経営的には正解だったのだ。

 

では、次のIT投資は何が考えられるかというと、事実上のパチンコ台の撤廃である。そもそも、パチンコ屋において圧倒的にコストがかかっているのは新台入替と呼ばれるイベントである。ずっと同じ台を置いているとお客さんに飽きられてしまうので、台を定期的に入れ替えるのである。

 

しかし、パチンコ台というのはめちゃくちゃ高い。1台40万円ぐらいという話を聞いたことがある。それを何十台単位で購入し、多いところでは週に1回ぐらいの頻度で行われるのだから、かなり売上を圧迫していると思われる。

 

ただ、パチンコホールにとって、新台入替はおそらく最も集客効果のあるイベントなので、この習慣を断ち切るのは非常に難しい決断である。とは言え、新台入替をどうすればもっと安くすることができるのか、を本気で考える時期にもう既に差し掛かっている。

 

そこで登場するのが、配信型のパチンコである。要するに、パチンコ台はただのハードウェアとして、パチンコのソフトウェアのみをデータ配信することで入れ替えるのだ。新台入替の経費は圧倒的に割安になるだろう。

 

今のパチンコ台は、パチンコの機種ごとに少しずつ釘の配置や役物が異なるものを一々製作しているから割高なのである。だったら、機器としての枠組みは全部統一して、ソフトだけで区別するようにした方が良い。

 

そんなことすれば、個別での釘の並びや役物がなくなって、パチンコを打たなくなる人が現れるのでは?と懸念する人がかならずいると思うが、そんなものは新台入替にかかるコストの前では全く意味を成さない程度の懸念である。

 

そもそも、スマホでも実機同様に遊べるアプリがあり、会員数を続々と伸ばしている現状を踏まえれば、釘や役物が本質的なパチンコの価値ではないことに簡単に気づく。わざわざパチンコ屋に来る人はあくまでギャンブルをすることを本質的には求めているのだ。それ以外の要素を排除したところで、各台計数機同様ほとんど悪影響はないどころか、プラスの効果の方がデカい。

 

このご時世に、機種ごとにデザインされたパチンコ機器自体に価値がある、というのは残念ながら願望でしかない。あくまでハードウェアに拘った任天堂が、スマホのアプリに惨敗だったのも、過去の延長戦上で考えてしまったからである。

 

パチンコホールが数十年後も残っているとしたら、パチンコホールはデータ配信型で、あるいは、自分が座った席で、好きな機種を選んで打てるようになっているのではないだろうか。

 

考える上で参考にした本↓ 

「0から1」の発想術

「0から1」の発想術