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そして今日も考える。

企画、得意ですか?

企画、得意ですか?

自分の企画力に自信がある人はどのくらいいるのだろう。少なくとも、この人は企画力があるな、と感じる人は自分の周りにはいない。といっても、開発部隊が仕事を始めるのは、基本的に企画が終わった後の仕事なので、当然と言えば当然だろう。

 

正確な割合を知っているわけではないが、多分会社の中に企画型人材が2割もいれば良い方なんじゃないだろうか。例えば、研修でクラス全員でビジネスの企画書を作る、みたいなグループワークをやったことがあるけれど、「企画が得意な人?」と聞いても、自負を持って手を挙げる人はいなかった。

どうやって企画する?

企画をする、となると、まぁたいていの組織では「ブレスト」を行うんじゃないかと思う。三人寄れば文殊の知恵、ではないけれど、みんなで意見を出し合った方が良いアイデアが出せるという共通認識がある。別に間違ってはいないと思う。

 

しかし、このブレストの結果、良いアイデアが出たなーという経験はあるだろうか。私は今までに一度足りともブレストの結果に満足できた経験はない。たいていの場合が、特定の人物がいくつかアイデアを出し、残りの大多数がその羅列から一つの選択肢を選ぶ、みたいなやり方をとっているからだ。ブレストの本質である、複数のアイデアのコラボレーションから生まれる新しい名案、みたいなものに出会ったことが少ないのだ。

 

もちろん、ブレストっぽくグルーピングをしてみたり、掘り下げて考えてみたりして、より高次のアイデア創出に向けて活動している組織も存在はしているのだと思う。でも、そういう取り組みがうまくいかない場合も多い。具体的にどういうことなのか、とか似たような事例にどんなものがあるか、といった展開型の思考を働かせようとしてもアイデアが出てこないことがあるんじゃないだろうか。これでは残念ながら、最終的な結論はごく平凡なものになってしまう。

企画ができない理由

「企画ができない」というのは大きく二つだ。一つはアイデアが出てこない、もう一つはアイデアの先、ビジネスの企画書としてまとめられない、である。ただ、ほとんどの人が始めに感じる壁は「アイデアが出てこない」の方だと思う。ということで、ここでは、良いアイデアが出てこない理由にフォーカスする。

 

なぜあなたは良いアイデアを出すことができないのか。こう問えば、自分には企画力がないから〜、とかクリエイティビティがないから〜という理由を答える人が多い。もちろん、私たちのほとんどは企画力もクリエイティビティも求められずに育ってきた人がほとんどである。企画の経験値が少ないのだから、能力がないと思うのは当然のことだ。私もはっきり言って企画は得意ではない。ただし、それが自分の企画力やクリエイティビティが足りないせいだとは思っていない。足りないのは知識である

企画の質は何に依存するのか?

実は人のアウトプットの質を決める要因は二つしかない。データとプロセスである。データ、すなわちどんな情報を元にしているのか、その情報自体がどれほど信用できるのか。そしてプロセス、すなわち情報の加工法であったり、情報の関連性から結論を導くためのロジックやスキルのことだ。質の高いものを生み出すには必ずデータとプロセスのどちらも必要である。これはアウトプットが企画やアイデアの場合でも同じだ。

 

クリエイティビティというと、どうしても創造性とか閃きといった言語では説明がつかない能力(=プロセス)にばかり注目が集まってしまうが、閃くための素材(=データ)がない状況ではクリエイティビティなんてものは発揮しようもない。

 

例えば、アーティストと言えばクリエイティビティに溢れた代表的な職業である。良い音楽を生み出せる人は間違いなく創造性が豊かである。ただ、彼ら彼女らが良い音楽を生み出せるのは、音階を知っていたり、言葉を知っているからだ。加えて、自身の経験から感じた思いの良い表現方法をしっていたり、曲調が与える感情的な効果を知っているからである。まさにフレーズを閃いた瞬間は「神から舞い降りてきた」のかもしれないが、そのための素材集めが終わっていたからにすぎない。

ビジネス企画はデータの質が支配的

アーティストの場合は、組み合わせる要素(音、言葉)自体は非常にシンプルであり、その組み合わせ方で良し悪しが決まってしまう。だからこそ、どんな知識を持っているかよりも、どんな風に組み合わせるのかという感性、センスの部分が重要視される傾向にあるとは思う。

 

しかし、ビジネスマンのアイデアなんて、ほとんどが既存の問題を少し改善しましたとか、別の業界でやってたことをこの業界にも適応しました、みたいな組み合わせ方がほとんどで、組み合わせ方はそれほど複雑ではないことが多い。となると、むしろどんな知識を持っているかが企画においては支配的な能力だと言えよう。

 

ただ良い知識・情報を得ることは簡単ではない。今はネットで色んなことが調べられる世の中にはなったが、誰でも速く最新情報を得られるようになっただけで、競争優位を保つことはできない。ネットに上がっているアイデアは既に誰かに実行している。つまり、2次情報ではなく、1次情報から自分で考えて知見を導く、というスタンスが必要になるのだ。

 

アンテナを高くはっておくこと、と社会人なら上司なり先輩なりに言われたことはあるだろう。ただ、アンテナを高くはっておくことの本当の意味は日経新聞を読みましょうとかそういうところに本質があるわけではない。どちらかと言えば、日々の生活の中から、変化を感じ取ることだと思う。

 

例えば、最近はiQOSという電子タバコを吸っている人が非常に増えたと思う。もしかしたら喫煙者ではないから知らない、という人がいるかもしれないが、これを知っているか知っていないかというのは一つの大きな差になる。

 

さらに、じゃあなんでiQOSが流行ったのかを分析してみると、さらに普通の人は知らないような情報にありつける。iQOSの特徴は何で、メリットやデメリットは何で、他の電子タバコとは何が違って、その中でもどんな部分に良さを感じている人が多いのか、などなど。

 

例えば、iQOSは正式に保障されているわけではないが、健康への害が小さいことが知られている。多くの人がこの部分に魅きつけられているとしたら、例えば、社会の健康に対する意欲が高まっているのではないか、という仮説が導ける。その上で、健康に対する意識調査アンケートとかを調べてみる。

 

案の定、健康に対する意識が高まっていた、ともなれば、他に健康のためにどんな活動をする人がいるのか調べてみる。ランニングをしている人が多いとなれば、じゃあランニングという活動を手助けすることができるビジネスはないだろうか、と想像してみる。流行りのウェアラブル端末と組み合わせて何かできないか考えてみる。じゃあウェアラブルで心拍を計るアプリを提供してはどうだろう、みたな流れ。(これは完全な後付けだが。。。)

 

ただ、一番難しいのは、「気づく」ことだと私は考えている。最近何か世の中変わったことありましたか?と問われて何か思いつくだろうか。パッと出てくる人はアンテナが高い方だと思う。そもそも、変化に気づけないことも多い。普段から意識していないと、変化があっても気づけないのが人間なのである。

 

ただ、カラーバス効果という言葉があるように、「今日これを見つける」と思いながら、生きていると世界の捉え方は変わる。例えば、私はそれなりの頻度でブログを日々更新しているが、こんな芸当ができるのは、ブログに書きたいテーマが既に頭の中にあったり、あるいは、ブログに書くテーマを常に探しながら生きているからである。ブログをやっていなければ、何かに疑問を持つこともないし、ここまで思考を活発にすることもない。ただのうのうと生きていたはずだ。

科学的に生きると企画力は身につく

ある意味、企画力というと、文系バリバリの営業職の人に求められそうではあるが、必要なのは科学的なスタンスである。事象に対して疑問を持って納得のいく理由を調べる、本当に正しいか調べる、本当に正しいとすると、別にどんな事象が起こりうるのか仮説を立てる、実際に起きているのか確認してみる、みたいな仮説検証のプロセスが重要なのだ。私は理系だけど、興味のないことに科学的スタンスを発揮できないから企画には向かないなーと思う。

 

結論、アイデアが出ないと思ってる人の9割は勉強不足ということ。