∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

社会的な何か

やりたい仕事は何なのか。社会人ならそんなことを考えたことが一度はあるだろう。就職のタイミングあるいはもっと前から考えている人もいるかもしれない。私は今も考えている。「今やっている仕事がやりたいことなのか?」と問われた時に、やっぱり今やっている仕事はなんか違うな、と思う。

 

「じゃあどんな仕事がしたい?」と聞かれ、それに対して即座に解答できるほどの正解は持ち合わせていない。ほとんどの人がそうであるはずだ。今の仕事は嫌だ、別の仕事がいい、と言って、別の担当へ異動した先輩を何人か私は知っている。異動した彼らのほとんどは今の仕事もそんなに面白くはない、らしい。(一方で、異動してよかったとも答えているので、ステージは上に上がってはいると思う。)

 

若者の多くにやりたい仕事がない、仕事に心から満足できない理由、というのを自分なりに考えてみた。たどり着いた答えは一つ。視野が狭いことである。

 

言うなれば、手段を目的化してしまっている。人と話すことが好きだから営業、英語を使いたいからグローバルで働きたい、プログラミングが好きだからIT企業、書くことが好きだからライター、お笑いが好きだからお笑い芸人。いや、もちろんそれは一つの切り口としては正しいし、必要だ。

 

でも、これらは自分軸で、自分中心の考え方だ。仕事をする上では必ず、社会軸での答え、というのが必要になる。ただ、社会軸を持ち合わせている人は驚くほど少ない。自分が就活をしていた時には全く持ち合わせていなかったし、一緒に面接をしている学生のほとんどもそうだったと記憶している。

 

例えば、私のようにシステムを作っている会社だと、かならず聞かれる質問の一つに、「どんな業界をターゲットにしたシステムを作りたいか?」という趣旨のものがある。もちろん、答えを準備しないわけには行かないので、就活用の解答というのは誰しもが準備している。ただその実、本当にその業界に対して何かしたいか、というとそうではない。むしろ、業界は何でもいい、という風に考えている人が多い。

 

特に私たちの世代に顕著だと思うのは、「世の中に何の影響も与えたくない」と考えている人が非常に多い。自分の生活のためにお金が必要なだけで、自分が出した成果が何かの役に立って、世の中を変える、なんてことは一切望んでいないのだ。だから自分の成長とか、目標の達成には関心があるけれど、誰に対して?とかどんな影響を?とかについては深く考えていない。私自身がそうだ。

 

でも、実は仕事の本質はそこにあって。というかそこにしかない。だからそこを考えない限り、やりたい仕事なんてものは見つかりっこないのだ。エントリーシートの添削とかもやっている、山田ズーニーさんというライターは、これを「実現したい世界観」と表現していた。これは言い得て妙、まさにどういう世界を実現したいのか、みたいな私たちの世代からすると、非常に鬱陶しい文言ではあるが、それが必要なのだ。プラス「マイテーマ」、要するに自分が達成したい具体的な何かがあると、良いらしい。

 

就活の時に、塾講師になった大学の友人がいた。彼は大学時代から塾講師のアルバイトをしており、就職のタイミングで別の企業にいくのではなく、塾講師を続けるという選択をしたのだ。たぶん、あんまり一般的な選択ではないように思う。

 

ただ、彼の選択の背景には、ただ教えることが好きとか向いている、だけではなく、もしかすると、まさに「実現したい世界観」みたいなものがあったのかなーなんて思うことがある。塾講師のアルバイトの中で見つけた、というべきか。実現したい世界観まではいかずとも、社会的な何かをアルバイトの中で見つけたはずである。

 

アルバイトは社会経験になる、とはよく言われるけれど、アルバイトの中で経験できる社会というのは限定的なものだと最近感じる。例えば、組織・チームとしてのうまく働く方法とか、最低限の礼儀とか、コミュニケーションとかは学べるが、社会との接点を感じる瞬間とか、自らが作り出した価値を提供することで誰かの役に立つ、みたいな経験はあんまりできないんじゃないだろうか。

 

少なくとも、私はそうだったと思う。パチンコのアルバイトは不特定多数のお客さんに対して接客をするものだったけど、価値の本質はパチンコ台ということもあり、自分の存在意義とかはないに等しい(店員に怒られそうだけれど)。もちろん、たまに起点をきかした対応が必要な場合はあるし、お客さんから感謝されることもあるのだけれど、自分が誰かの役にたった、という実感を感じることは正直あんまりなかった。つまり私はパチンコ店のアルバイト経験の中で「社会的な何か」を見つけることはできなかったのだ。

 

 学校とか教育の現場では社会とつながることはほとんどない。基本的にはただひたすら自分の能力を高めることに主眼が置かれているし、せいぜい、チームで頑張って何かを達成する経験、ぐらいなものだ。達成が誰かへの貢献、役立つという経験が圧倒的に足りない。だから、社会軸を持たずに社会に出る若者がたくさんいる。

 

やりたいことがないなら、社会的な何かを学ぶ、感じるところからスタートするべきだろう。