∑考=人

そして今日も考える。

バタフライエフェクト

たぶん今が人生の1つのターニングポイントやな。

 

なんとなく、そんな確信はあった。1つはこのまま出世を目指していく道。もう1つは遠回りでも自分の欲求に従う道。その分かれ道がくっきりと見えた気がした。

 

私のこれまでの選択というと、シンプルに組織に必要とされることをやる、だった。組織として結果を出すためにはそれが最も合理的であるし、その中で学べることがあると思っていたから。そのおかげといってはなんだが、絶対に自分には向いていないと思っていた仕事も人並み程度かそれ以上にはできるようになったという感覚はある。

 

良くも悪くも、いろんなプロジェクトにいろんな役割で仕事をさせてもらえたこともあって、ここにこのままいてもマズいな、という不満が爆発することは幸いなかったのだ。

 

あまり望んでいないプロジェクトに飛ばされたとしても、実際のところやってみないとわからない。今振り返ってみると、「あれは楽しかった」と思える仕事も元々別にやりたかったわけではなかったりするし、人気のプロジェクトもタイミングによっては全然面白くないこともある。

 

結局のところ、私は選択をしてこなかっただけなのかもしれない。組織に流されることを甘んじて受け入れていただけだったかもしれない。自ら行動を起こすのが面倒に感じていたのはもちろんのことであるが、何より私に足りなかったのは覚悟なのだと。今回、以前開発したシステムのプロジェクトに戻った時にそんなことに気づいた。

 

「楽だけどつまらない仕事」と「忙しいけど楽しい仕事」のどちらを選ぶか。これなら私は迷わず後者を選ぶ。でも現実はそうはいかない。選べるのは「忙しくてほどほどの仕事」と「めちゃくちゃ忙しくて楽しいかもしれない仕事」のどちらか。あなたなら一体どちらを選ぶだろうか?

 

私は潜在意識の中でいつもこの2つの選択肢を天秤にかけていた。そして、私は前者を選んでいたのだ。

 

ただ前者が良いと思っていても、人事的な都合で意図しない選択を強いられる時ももちろんある。私の場合は、約2年前から意図せず、「めちゃくちゃ忙しくてつまらない仕事」を余儀なくされることになった。そして、今回戻ってきたプロジェクトはその最たるものだったと言える。

 

そんな今のプロジェクトもあと一ヶ月ほどで終了という時期。状況的にはかなり落ち着いている(落ち着かせたと言った方が正しい)。開発プロジェクトが終わると、次アサインするプロジェクトの話になるのがシステム開発の世の常であるが、私はこのまま維持として落ち着くまでは残って欲しいと言われていた。加えて、来年最短で出世できるように組織としてバックアップしてくれる方向で動いていたのだ。

 

しかし、今の私は出世になど興味はない。これは本当にそう思っている。これまで権限があるだけで役に立たない人間をたくさん見てきたせいだと思う。あるいは、そうでない人に出会えば変わるのかもしれないが。

 

それならまだ楽しい可能性にかけた方がマシだ。素直にそんな気持ちが腑に落ちていた。これを覚悟と呼ぶのかもしれない。私は別組織へ異動する決意をした。今所属している組織の意向とは関係なく、別組織の長と面談をして、採用されれば異動できる、というよく考えると素晴らしい仕組み(公募制度)が弊社にはあるのだ。

 

とは言え、面談はまだ実施していないので採用されるのかはわからない。加えて、上手く事が運んだとしても、異動できるのは早くても来年度から。だから私が現時点でやったことは、覚悟を決めて、異動したい希望先をノリで選んで、面倒な自己PR文を書いて応募しただけなのだ。

 

でも、この一歩の影響力は私の想像を遥かに超えていた。

 

まず、昔働いていたプロジェクト全体の飲み会で、異動願いを出した話をすると、今は別組織になっている部課長陣から勧誘を受けた。人事異動の制度で、上を通して自分の組織に引き抜くといってくれる人がいたのだ。

 

そして、どちらが良いかを再び悩み始めていた頃、今度は同じ事業部の部長から個別に呼び出しを受けることになった。端的に言えば、別の事業部に移るのであれば、同じ事業部配下で別の組織に入って欲しいと懇願された。それも来月から、と。

 

私は公募を出しただけだったが、それだけでも選択肢が5つに広がり、異動時期が数ヶ月早まることになったのだ。まったくもって嬉しい誤算である。(実のところ、異動希望を出した部署は大変社内的には評判が悪く、若干の後悔が募り始めていたところでもあり・・・)

 

私がこれまでの同じように、課長に自分の意志をただ伝え続けているだけではこんな変化は絶対に起こせなかった。事実、私は元々7月までの約束が12月までになり、4月になり、最終的には「維持が落ち着くまでは」みたいな無期限契約にすり替わっていた。

 

だから、ただ伝えるだけでは足りない。必要なのは、覚悟を示すこと。一歩踏み出すこと。

 

他のやり方はいくらでもあるだろう。めちゃくちゃキレる。めちゃくちゃ泣く。「会社辞めます」と言う。普段の自分が簡単にやらないことなら何だっていい。私にとっての覚悟は、公募を出し、そしてそれを課長に伝える、ということ。ただそれだけ。そして、それだけでも状況は大きく変わる。そんなことをこの年になって学んだ気がするのである。