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そして今日も考える。

STEM教育へシフトする前に

STEM教育、という言葉がある。これは科学(Science)、技術(Technologie)、工学(Engineering)、Mathematic(数学)に重きを置いた教育のことだ。そして、今後はこういった教育の必要性が高まっていくことを示す象徴的な言葉でもある。

 

最近話題となっている、インダストリー4.0など、第三次産業革命以来のインパクトのある生産技術の変動を考慮すれば、ますます世界レベルでの自動化が進んでいくことは予想される。

 

自動化が進むということは、単純作業が排除されるということである。そしてその代わりに、自動化を実現するコンピュータを管理するような仕事が生み出されていく、ということだ。なので、まぁ今後増えていくであろう仕事の分野を考えた時に、それがいわゆるSTEM教育、という点については合点がいく。

 

私などは、そもそも大学院までかけてSTEMを学んできた立場なので、自分が生まれた頃から教育の主軸がそこにあれば良かったと思うが、汎用的教育として、全員がSTEM教育を学ぶことが本当によいことなのかについては色々と思うところがある。

 

そもそも大前提として、私は教育なんて考え方は非常に傲慢だと思っている。本人に学ぶ気がなければ何を教えても無駄だからである。全員にSTEM教育をする、となっても、そこに関心を持てない人が多ければその教育はあまり効果的ではない。そもそも今の教育制度ですら、数学や科学が嫌いな人は沢山いる。その数だけ教育が埋もれていくことになる。

 

また、実際には全員がSTEMを理解してさえいればそれで世界が回せるわけでもない、と思う。今以上にコンピュータを管理する人が必要になったとして、その人達を管理したり、うまくマッチングさせたり統合させて価値を創るような仕事は必ず今後も必要にになるからだ。

 

また、技術に長けた人間ばかりが育っても、コモディティ化が進むだけである。例えば、今のSEとかプログラマーなんて仕事はまさにコンピュータの技術者であるが、正直人により能力値に差異があっても、それらを管理する立場からすると、代わりなんていくらでもいる、という風に映る。

 

そんなこんなで、STEM教育には反対だ、と断言したいところではあるが、STEM教育の良し悪しを考える前に、今の日本の教育ってどうなのかという方に興味が湧く。一通り学生時代を終えて社会人になったわけであるが、未だに理科や社会の勉強が何かの役に立ったと思ったことがない。今後もないと思う。

 

別に義務教育自体を否定するつもりはない。勉強すること自体には意味があったと強く感じているからだ。結局、何かを勉強してきた後、自分の中に蓄積してきた知識が抜け落ちた後にもまだ残っているものにこそ勉強の価値は宿っている。

 

でも、どうせ長年勉強するなら、抜け落ちていかない具体的な知識や技術を学んだ方がいいわけで。なんで大人になってからほとんど必要とならないような知識や技術を教えているのだろうかと思うわけである。

 

日本の義務教育といえば、当たり前のように国語・算数・英語・理科・社会あと音楽・美術・家庭科などの副教科を教えるし、教育の過程でそのことを誰も疑問視しなくなってしまうわけではあるが、一体なぜこれらの科目が選出されているのだろうか。

 

そして、それは今の時代に即していると言えるのか。日本のスタンスは不明であるが、インダストリー4.0、STEM教育へのシフトを受け、教育を考えなおすキッカケとなってほしいと思う。

 

決定版 インダストリー4.0―第4次産業革命の全貌

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