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そして今日も考える。

一億総クリエイター時代の幕開け

ここ数年でヒットしているITサービスは、生産活動を促進する仕組みが非常に多くなってきている、と私は考えています。一億総クリエイター時代に本格的に突入しつつある、というのが正直な感想です。

 

ここで言っている生産活動とは、「何かをアウトプットする」ことです。それは知識なり、作品なり、サービスのことです。例えば、今私が書いているブログも生産活動だし、Youtubeに動画をアップロードするのも生産活動です。音楽を演奏するのも生産活動です。しかし、読書とか映画鑑賞とかは生産活動ではなく、消費です。食事も消費です。おわかりいただけるでしょうか。

 

そもそも兆候としては、カメラ付きケータイの大ブレイク時代からあったのでしょう。確かに当時カメラ付き携帯が流行ったのは、思い出を手軽に残せるのが良かったからだったのかもしれません。しかし、今はどうでしょうね。

 

例えば、風景だけの写真を撮る人がいます。そんな写真ならネットに同じものがあるやないか、と言いたいところですが、これも本当の価値は、「自分がその場で撮影したこと」にあると思うんですよ。で、自分の手で撮影した風景だからそれは生産活動なんです。

 

今インスタグラムとかにアップロードされる写真も結構拘ってる人が多いですよね。あれも自分ならではの撮影、ようするに作品としてネットにアップロードしているわけなんです。もちろん、そういう活動が盛んになったのはインスタグラムの影響でしょうが、既に人々の潜在的なニーズとして「何かを生み出したい」というものがあったのでしょう。

 

ブログやYoutubeが流行ったのも全く同じ理由です。アップされる動画が面白い、というのは結果的に生まれた価値であり、動画を作ってアップすること自体に喜びを感じる人がいたから急成長したプラットフォームです。

 

そして、最近のITトレンドの一つであるシェアリングエコノミーというのは、本質的には、今まで無駄になっていた価値を、その価値を必要とする人とリアルタイムでマッチングするサービスです。が、これは個人の行動領域が、趣味のしての生産活動からビジネスとしての生産活動に変化している兆しでもあります。

 

ブログやYoutubeも元々は収益を期待して投稿する人はさほど多くなかったと思いますが、ブロガーやYouTuberなどとして、個人として稼ぐためのプラットフォームへすっかりと変貌しています。

 

ある意味、今なお人気のあるソーシャルゲームのアプリなども、自分だけの最強のキャラを作っている、みたいな意味では生産活動に近いのかもしれません。個人的には、ゲームを生産活動に分類する気はありませんが、一時期レアなカードを現金で取引されることが問題となったように、ゲームの中に閉じれば価値あるものと言えます。

 

こんなふうに、今、消費者は単なる消費者ではなくなろうとしています。さらに、「趣味で生産する」から「生産してビジネスにする」人が増えています。その理由は、世の中がすごく便利になったから、そして場としてのサービスが整ったからです。

 

例えば、ショッピングといえば昔は娯楽の一つだったと思います。私も高校生ぐらいまでは服を買いに出かけたりするのが好きでした。でも、今はほとんどショッピングに行くことはありません。ほぼ全てネットショッピングで済ませます。

 

なぜならば、ネットの方が在庫も多いし、種類も多い。しかもレコメンドまでしてくれる。決済も簡単だし、店員との無駄なやり取りが必要ない。さらに、決定的なのが、いつでもどこでも変える。ネットショッピングの方が明らかに合理的なんです。

 

ゲームも同じです。昔は家に帰ってから数時間だけしかできない環境でした。また友達を家に呼んだりしなければ、複数人で遊ぶことはできなかったはずです。でも、今はいつでも、どこでも、誰とでもできます。しかもほとんどのスマホアプリであれば無料で色んなゲームを遊ぶことができます。

 

でもこれ、俗に言う不便益が損なわれた状態です。いつでも、どこでも、だれとでもできるようになったことで、それ自体の価値が薄まってきているんですね。たぶん、電話とかも同じです。今の私たちにとっては電話とはただの連絡手段でしかありませんが、私たちより一世代前の人たちは、「電話」という行為自体が娯楽のようなものに感じていたんじゃないかと思います。

 

つまり、これまでの消費活動が徐々につまらないものになってきた最中、現れたのが生産活動を公表できる場としてのサービスの登場、そして、自分のリソースをて提供することで収益を得られる場としてのサービスの登場です。消費への飽きと生産ハードルの低下が個人の生産活動を促進しているんです。

 

と、ここまでは、消費者についての話でしたが、実は労働の現場でも同じようなことが起こっています。労働は基本的に何かを生産する活動ですが、生産するもの自体が事務的なものからアーティスティックなものへと変わってきています。

 

例えば、単純な事務処理とかは既に業務システムに置き換えられていますが、さらに今後は人工知能の発達により、コールセンターの受付業務など、やや高度ではあるが単純、といった作業もどんどん無くなっていきます。よって、人間の仕事はより創造的でクリエイティブなものにならざるを得ないのです。

 

まとめると、消費者の消費活動はより創造的になり、労働者の生産活動もより創造的になっていくということで、これすなわち一億総クリエイター時代ということです。もし、何の創造活動もしていないとしたらこの先の時代に置いていかれますよ。