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そして今日も考える。

AIの本質、一億総経営者社会

AIは49%の雇用を喪失させるという衝撃の予測が発表され、しばらく経つ。まだまだ先の話になるのかもしれないけれど、三菱UFLが1万人の業務量削減の方向性を示したりと、そう遠くない未来に様々な仕事は喪失していくことになると私も思っている。

 

まだまだ、人間こそが労働力の要だと本気で思っている人もいるかもしれないが、今の自分の仕事が将来残るのかを不安に思っている人もいるのではないか。もしかすると、「AIに奪われないような仕事」を見つけて、その分野で頑張っていこうと考えている人もいるかもしれない。

 

ただ、すでに長いキャリアを積んできている人がいきなり、AIに奪われないことを理由に全く別の職種にスライドする、というのはどうもナンセンスな気はしている。

 

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色んなメディアで、AIが奪う仕事とAIに奪われない仕事の分類を示されているが、実はAIが奪う仕事のたった一つの共通点は、「使われる側の仕事」である、という点である。端的に言うと、サラリーマンの仕事は奪うけれど、経営者の仕事は奪わない、ということだ。

 

「いやいや、サラリーマンの中でも奪われない職種もあるはずだ」、と考える人もいると思う。これは半分正解で半分間違い。たしかに営業など、奪われにくい職種はあるし、逆に奪われやすい職種もある。でも、職種が全てを決めるわけではないのだ。

 

営業であっても、契約などの事務手続きばかりをやっていたり、アポ取りやヒアリングばかりがメインの仕事であれば、簡単にAIに奪われる。たとえ、営業戦略やマーケティング企画を立案するようなポジションにいたとしても、上から降りてくる方針を本に単なる情報収集、加工などをやっているようではAIに奪われる。

 

AIに奪われるのは職種如何で決まるのではなく、スタンスが受動的かどうかなのだ。つまり、「これさえ決めてくれたら、やります」みたいな人は要らなくなる。逆に「こういうことをやったらいいんじゃないですか(価値があるんじゃないですか)」と言える人が残る。これって、優秀なビジネスパーソンなのか否かの違いと全く同じ。

 

これまでは受動的でも優秀、という人が社会に認められていた。抽象的なことを具体化できる人だ。例えば、すごく優秀なプログラマーとかは仕様が決まりさえすれば、それを動くソフトウェアという形にすることができる。

 

当然スキルも必要だし、誰にでもできることではない。ただこういう仕事は残念ながらAIに置き換えられていくことになる。AIも受動的だけど、抽象的なことを具体化するポイントにおいてはすごく優秀(になっていく)だからだ。

 

だから、例えば、プログラマーは価値あるサービスを考えられる人間になれなければならない。つまり、「経営目線でどうやったら儲かるか」の命題に答えなければならないということなのだ。誰しもがこういうことを求められる時代が来る。一億総経営者社会だ。

 

すごく厳しい時代が来るように感じる人もいるかもしれないが、裏を返すと経営の難易度はすごく下がる。これまでは、人を沢山雇ったり、色んなスキルのある人を集めないと、組織として価値を提供できるレベルで機能しなかったものが、一人+AIでできるようになるかもしれない。

 

今は、AIに経営はできない、という前提で話をしているが、もし仮にAIが経営をできるようになれば、「OK Google!会社作って今日中に1億儲けて!」とか言えば、何もしなくても1億稼げる、みたいな話にもなるかもしれないのだ。使う側にとってはAIはすごく便利なものなのだ。

 

職種を変える前に、価値を作るために何をどう使えばいいのか、を考える訓練をするのが先である。