∑考=人

そして今日も考える。

人はギャップを認識することしかできない

私たちが「これはおかしい」とか「間違っている」と判断する時、頭の中で行われているのは「比較」、それだけである。よく、変化に機敏に反応したり、違和感を検知できる人は感性の鋭い人と言われたりするが、感性の実態は、比較対象となる「答え」を頭の中に持っているかどうかが全てである。

 

例えば、以下の数式を見て欲しい。

 

1+1=5

 

ほとんど全ての人がこの数式をみると間違っていると考えるはずだ。そして、「間違っている」と判断した理由はたった一つ。頭の中で出した正しい結果と違うからだ。きっとほとんどの人が頭に下記の式を思い浮かべたはずだ。

 

1+1=2

 

すると、自分の前にある情報と自分の頭の中にある情報が違う。よって間違っていると判断するのである。つまり、自分の頭の中にある情報、すなわち”答え”と比較することによってのみ「間違っている」、「おかしい」などの疑問を抱くことができるのだ。

 

 なので、下記の例のように、少し複雑な式になった途端に判断が難しくなる。

 

1983726578÷24998378=924

 

この式は正しいか?否か。もちろん、適当に作った数列なので、電卓を使って実際に計算してみれば間違っていることは判断できるだろう。ただ、もう一度やって正しさを検証する、というのは、仕事をする上での良い方法論ではないし、少なくとも分担して仕事を進める意味がない。というわけで、この数式を見た瞬間に「何かがおかしいな」と違和感を抱けなければ確認者としては失格である。

 

ちなみに上の式は、複雑ではあるが、ちゃんと違和感はある。まず、結果の一の位が4になるのはあり得ない。なぜなら、4×8=32なので、少なくとも…2÷....8=となっている必要がある。逆のアプローチで考えても、...8÷....8という数式でありえる選択肢は1か6だけだ。だからやっぱりありえない。よってこの数式は間違いだ、と計算し直さずとも判断できる。

 

 

もし、一の位が1だったとしても、オーダーがおかしかったり、先頭の数字だけ計算して見てもおかしいということがわかる。いずれにせよ、「これが正しいはずだ」という知識をすでに持っているか、「こうすれば確からしき答えを瞬時に出せる」という方法を事前に知っておかなければ、妥当性を測ることができないのだ。

 

仕事の場合は、唯一の正解というものはないので、ざっくりでいい。また数式の例をするなら、

 

1983726578÷22998378=91

 

ぐらいであれば、何となく合っていそうだと判断して良い。(もちろん、誰が計算したのか、とか何の数字かによってはもう少し慎重に判断しなければならない場合もあるが。)実際に計算してみても、86.25…ぐらいなので大きく外れてはいない。数字の場合はこんなに外れるとよくないかもしれないが、「大きく外れてはいない」という状態を維持するのは仕事を進める上では非常に重要だ。

 

 もちろん、この考え方は自分が管理や確認をする側になれば当然求められるとしても、別に自分が作業者であったとしても、自分の頭で妥当性を判断する癖をつけるためにも「正解らしきものは何なのか」を事前に考えるようにしておくことをオススメする。慣れてくると、「何となくこれが正しい」という答えにたどり着くまでの時間が短くなっていくことだろう。