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そして今日も考える。

ホワイトカラーの生産性を上げるために押さえるべきたった1つの本質

たまには結論から述べよう。

 

ホワイトカラーの生産性を上げるために必要な一つの本質とは、

「意思決定の速さ」

である。

 

他にもプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力、資料作成能力、マネジメント能力、色んな能力を思い浮かべた人もいるかもしれない。だが、これらも本質的には全ては迅速な意思決定に繋がっている。だから意思決定を速くすることだけを考えれば良い。

 

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昨年ぐらいから働き方改革がちょっとしたムーブメントになって、リモートワークとかテレビ会議、チャットアプリとか、新しいテクノロジーを使ってより多様な働き方が推奨される社会になってきていることは周知の事実だ。

 

こういった働き方改革には大きく二つの目的があって、一つは言うまでもなく「生産性を高める」こと、そしてもう一つは「より自由に働ける」ことだ。そして、後者が前者の手段となっているという理論から、実際には”より自由な働き方を実現する仕組み”が生産性向上施作として語られていることも多い。

 

確かに、リモートワークやテレビ会議を使えば移動にかかるコストは減るし、チャットアプリを使えば形式張ったメールを使うよりも気軽にコミュニケーションをとることができ、その結果仕事は効率的にはなるだろう。直感的にはみんなそう考えているはずだ。

 

しかし、その削減効果が今の労働時間全体の削減にどれほど寄与しており、どれほど成果の量や質を向上させているのか、を定量的に理解している人たちはいるのだろうか。少なくとも私はその真実を知らないし、たとえ、「リモートワークにより30%削減」みたいな成果を謳っている企業があったとしてもその因果関係が正しさについては懐疑的に考えるだろう。

 

はっきり言って、「フルリモートワーク導入」とか「就業中の移動禁止」ぐらいまでやるならまだしも、一部の組織で限定的に導入したところで、大した定量的な効果は見込めていない。むしろ、これらの施作に潜むデメリットのせいで、逆に生産性が下がっているのではないか、という声もしばしば散見される。結局、何となく効果はありそうだけど、本当に効果出てるのかな?みたいに思っている人が大多数である。

 

ではなぜ、無駄なコストや時間を削減しているはずなのに生産性が上がらないのか。それは先述した、「より自由で働ける」ことと「生産性を高める」ことが全くの別物だからである。

 

例えば、自由に働ければ伸び伸びと仕事ができ、生産的になる人は一定数存在する。しかし、自由に働けるようになると緊張感が解け、仕事をしないという人も一定数存在する。つまり、自由で働けることと生産性を高さにそれほど大きな相関は現れない。

 

本質的には、「より自由に働ける」というのは「仕事中にストレスを感じない」ための手段に近い。こっちの方が相関も高い。しかし、全くストレスのかからない職場が生産性が高い、というわけではないのだ。

 

そもそも、生産性という概念は、費やしたコスト・時間に対して生み出した価値で計算されるものだ。費やすコストや時間を下げれば生産性が上がる、というのはほとんど間違いで、こと日本人は価値のない仕事を多くやっている傾向が多く、生産性を下げているのは明らかだ。

 

しかし、それが社会として当たり前になっていたり、ホワイトカラーの生産性を評価する機能がなかったりでずっと変わらないまま現代まで来ている。私の会社も自分たちが管理するベンダさんの生産性とかは評価することもあるが、自分たちの生産性となると、測るのが難しいこともあって、全くもって意識していない。

 

原点に戻って考えれば、ホワイトカラーの仕事とは考えることである。そして、仕事で「考えること」というのは「決めること」と同義である。何の意思決定も含まれない考えはただ悩んだだけであって、考えたとは言えない。

 

そして、意思決定にも二種類ある。それは「個人としての意思決定」と「会社としての意思決定」である。

 

意思決定のプロセスは基本的に、情報収集、立案、比較、選択、という順序で行われる。いわずもがな、個人としてこれらのサイクルをいかに速く回すことができるのか、が意思決定を速くする上で重要である。

 

やっかいなのが、「会社としての意思決定」である。何を隠そう、冒頭の「意思決定の速さ」とは「会社としての意思決定の速さ」が支配的だ。そして、会社としての意思決定を行う重役たちが意思決定を行うために、社員たちは情報収集を詳細に行ったり、厳密に内容チェックをしたり、資料を作成したり、プレゼンテーションをしているに過ぎない。

 

しかし、実際に会社としての意思決定を担う方々は大抵「意思決定の速さ」よりも「意思決定の正確さ」を重視してしまっていることが多い。「この数字は確かなのか」「ここをもう少し詳細にわかるようにしてほしい」「こういう可能性もあるのでは」と。

 

全ての網羅的に調べ、徹底的にリスクを排除しないと意思決定できない人が上にたつと、結局彼らに意思決定の正しさを必要以上に説明しなければならず、現場の人間たちは「意思決定の正しさ」を優先することになり、結果的に意思決定のスピードが落ちる。

 

つまり、自分が速く意思決定することと、相手に速く意思決定してもらうことを実現するための能力を鍛えなければならないのだ。そして、それらこそ個人レベルではなく、会社レベルで方針転換していかなければならない話なのだ。

 

原点に立ち返ってみると、リモートワークやテレビ会議がいかにスケールの小さい話かがお分かりいただけるだろう。