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そして今日も考える。

パチンコ業界動向を調べてみた

月末に業界動向についての発表を行うことが決まっている。業界というのは、私のお客様の業界、すなわちパチンコホール業界のことを指す。なんでも、我々の部署(というかチーム)の問題点として、「仕事にやりがいがない」と感じていることが挙げられており、業界についての勉強会を月に1回開くという対策が取られることになったのだ。

 

一体、どういう論理の飛躍を経て、「仕事にやりがいがない」から「業界についての勉強会を開く」という対策が選択されたのかは定かではないが、まぁこれは大組織ならではの茶番だろう。要は、課題に大して何らかの対策を打っていればいいと思っているのだ。それが必ずしも問題の真因を解決する必要はないというのはもう共通認識なんじゃないかとも思う。

 

そして、最初の勉強会を担当するがこの私である。パチンコ屋のアルバイト経験があるせいで、なんだか期待されてしまっているのだけど、論理で生きている彼らに私から伝えられるものなどない。定量的なデータと確証があって、初めて発言が受け入れられる。私が現場で感じた肌感覚を伝えたところで、また、私の経験に裏付けられた主観的な意見を述べたところで、受け入れてはもらえないだろう。

 

とは言え、無駄だからやらない、というわけにもいかないのが新人の悲しい性だ。そんなわけで、パチンコ業界について色々と現在調査をしている。その結果を少しだけ備忘録的にまとめておこうかと思う。

 

パチンコ業界の市場規模は過去には30兆円を超えていたことがある。おそらく、スロットの4号機が全盛期だった頃だ。参考までに、IT業界の市場規模、コンビニエンスストアの市場規模が5兆円程度である。いかに巨大な市場であるかがわかるだろう。

 

しかし、今やそのパチンコの市場は、約19兆円規模とすっかり縮小してしまっている。ここで、私の本音を述べておくと、漸く適正な規模に落ち着きつつある、あるいはまだまだ大き過ぎるといってもよい。

 

業界が縮小した原因として考えられる要素は主に二つ、不況規制である。

 

そもそも近年の日本はずっとデフレ状態であるし、2008年にはリーマンショックによる株価の大暴落が起こった。国民の財布の紐は固くなり、少なくとも余暇の楽しみに多額を費やすことは難しくなっている。

 

そんな中、パチスロ4号機の規制や、パチンコの最低大当たり確率の規制等がかけられることになる。昔の人は「勝ちにくくなった」という表現を使うことが多いが、本質的にはギャンブル性が薄れてしまったのだ。昔なら20万使えば50万戻ってくる可能性があったが、今の遊技機で20万も使ってしまえば、もう取り戻せる皆無に等しい。

 

そんなわけで、ギャンブル性を求めてパチンコを打っていたヘビーユーザー層(もといギャンブル依存症の人)がパチンコホールから姿を消すようになったのが、市場縮小の始まりなのではと言われている。

 

もちろん、パチンコ屋もバカではない。ヘビーユーザーがダメならライト・ミドルユーザー層を増やそうという戦略に出た。そのためには、一般的な人がもっと気軽に遊びやすい場所となる必要がある。

 

最近は接客の質が高く、店も綺麗、分煙ボード付き、漫画も読み放題、みたいなパチンコ屋が増えている。これに加え、1円パチンコなどの低玉貸が全国的に普及していったのも、全てライト・ミドルユーザー層をターゲット顧客にしたことが起因しているはずだ。

 

事実として、近年のパチンコユーザのアンケート結果では、パチンコに求めるものの第1位が「ゲームの面白さ」になっていたりする。そして、パチンコに対する不満はお金が掛かり過ぎること。もう今の顧客は、パチンコをギャンブルというよりも暇つぶしのゲームのように捉えている節がある。

 

この戦略が奏功した一面はあったと思う。それでも、規制の波は止まらない。イベント広告の規制や等価交換の廃止(地域によるが)、今後はパチンコ税の導入され、最近旬な話題でいうと、今最も人気といっても過言ではないARTタイプのスロットにも規制が入るようだ。

 

警察は否が応でもパチンコ屋を潰したいらしい。いや、適正に保ちたいのだろう。先ほども言ったが、パチンコ市場が19兆円規模になったことを深刻視するのは不可思議なことだ。しかし、その水準が前提で仕事が回っている会社があり、その会社の給料で生活をしている人たちが沢山いるのも事実だ。発言と矛盾してしまうが、今の私もこれに該当する。

 

今後も規制は掛けられていくだろう。規制の旅にギャンブル性は薄れ、ヘビーユーザーの割合は減少していくことになる。一方で、ライト・ミドルユーザーを確保し続けるのは非常に困難であると思われる。

 

なぜならば、ライト・ミドルユーザーはパチンコをゲームの一種として捉えているからこそ、パチンコ屋に足を運ぶからである。つまり、パチンコ屋の競合他社は、ゲーム会社と言っても良い。現在、無料でハイクオリティなゲームがどれほど存在するかを考えれば、レッドオーシャンであることはすぐに分かる。

 

もちろん、パチンコ(というゲーム)が好きという人もいることだろう。しかし、すでにパチンコ、パチスロアプリがメーカーから直接、ないしはモバゲーなどのソーシャルゲームと連携して提供されている。そのほとんどがアイテム課金の無料型だ。少なくとも、負けるリスクを負ってでも勝ちたいという願望を持たない人にとっては、こちらの方が合理的に楽しむことができる。

 

ヘビーユーザーは法律により奪われ、ミドル・ライトユーザーは他のゲーム市場に奪われる。こんな中、パチンコ屋は生き残っていることができるのだろうか。あるいは、現在のパチンコ屋に存在価値はあるのだろうか。