∑考=人

そして今日も考える。

この世で一番必要のないもの

この世で一番必要のないものと聞いて、私がパッと思いつくのは酒とタバコである。

 

私はお酒も飲むし、タバコも吸う。でもその上で、この二つは別に無くても困らないだろうと思っている。特に酒については一人の時はほとんど飲まないし、皆が飲まないなら飲まなくても平気だから、私にとってはタバコと同じくらいに不要である。

 

こんな風に「酒」と「タバコ」を並列で語ってしまうと、大抵反感を喰らう。Yahoo知恵袋で「タバコって何の役に立つんですか?」という質問に関しては、「何の役にも立ちません。」みたいな回答が多数を占めるのに対して、「酒って何の役に立つんですか?」という質問に対しては、ほとんどが否定的な回答だったりするのも結構面白い。

 

酒とタバコの善悪を明確に分けるロジックはほとんどの場合、健康に良いか悪いかによって語られる。酒は適量の場合は健康に良いという説があるが、タバコというのは1本吸った時点で、自分だけでなく周りの人の健康まで害してしまうからである。

 

でも、実際問題酒を健康に良いレベルで留めている人ってどのぐらいの割合なのか。少なくとも、私はお酒を飲む日は必ず適量以上飲んでいる自覚はあるし、男社会で生きてきた体感としては8割ぐらいの人が飲みすぎている。つまりお酒は健康に良いから良い、という説明は間違っていることになる。

 

それは適度に抑えられない人間が悪いのであって、お酒のせいではない、という人もいるかもしれない。ただ、お酒が生まれてから何百年何千年も経っているのにも人間が制御できないのであれば、それはもはや人間のせいにしている場合ではないだろう。アルコールにもタバコと同じように依存性があって、そもそも制御すること自体が難しいものなのだ。

 

ただ、お酒は周りの人の健康に被害は与えない、そういう意見も最もだろう。ただ、お酒が原因で周りの人に迷惑をかける人は沢山いる。それは小さなものから大きなものまで様々だ。タバコが与える影響はすべて微小量が積み重ねられていくのに対し、酒が与える影響は時にはいきなり人の死を招くレベルに発展する場合もある。これは種類の違いであって、どちらが良い悪いと押し並べて比較することはできない。

 

本質的にタバコは不要で、お酒は必要だと考えられてしまう原因は多数決の原理にある。だってお酒全く飲めないって人よりもお酒好きな人の方が多いでしょ。一方で、タバコを吸う人はタバコを吸わない人に比べて少ない。だから、論理性など関係なく、Yahoo知恵袋のような結果になるのは当然である。

 

お酒を飲めない人にとって社会というのは凄く生きづらい場所だ。皆が集まるコミュニケーションの場というのは必ずお酒が介入してくるし、お酒を飲んでいる相手と素面の自分ではテンションやノリが全く違う。気分を害したり疲れることの方が多い。かと言って飲み会を避けていると、人間関係はどんどん疎遠になっていき、仕事なんかでは最悪の場合、出世にも響くかもしれない。でも、子供の頃はお酒なんてなくても楽しいコミュニケーションが取れたのでは?と思っているに違いない。

 

タバコを吸わない人にとっての社会も同じことだろう。皆が集まると、必ずタバコを吸うやつがいるし、副流煙に晒され、当然健康を害されることになる。とは言え、集団を避けていると、人間関係は疎遠になる。タバコなんて吸わなくていいじゃんって思っていることだろう。

 

という風に、実は酒もタバコも本質的には何も変わらない。ただ、私がタバコよりもお酒の方が要らないと思うのは、酔っている時も翌日も全く人間として使い物にならなくて、生きている心地がしないからである。私にとって二日酔いの日は「死んでいる」のと同じ状態で、それはタバコが削っていく寿命と比べて、果たして少ないといえるのだろうか、と思うからだ。