∑考=人 〜プロメテウス〜

そして今日も考える。

ITビジネスが顧客を傲慢にする

最近は、テレビの合間で当たり前に流れているように、動画サイトでもCMが流れるようになっています。動画の最初に流すサイトや、5分おきに流れるサイトなどありますが、最初の何秒間はスキップできない、といった縛りがあり、スキップするためにもわざわざクリックする必要があります。そして、少しクリックする場所を間違えるとよくわからないURLに飛んでしまったりして、わりと面倒です。

 

最近のネット広告は本当に進化していると思います。例えば、広告にカーソルを合わせて少し放置していると勝手に動画が流れ出すもの、ページの一番下まで行くと、広告が大きくなって画面の中央に現れるものなど、Web上で動的なページが生成されるのが今では当たり前です。

 

アマゾンの「あなたにおすすめの商品」のようなアルゴリズムもかなり普及してきたようで、通販サイトでチェックした商品がどこかのページで必ず表示されます。しかも、その通販サイトとは全く関連のないサイトで、です。おそるべし広告。

 

ネットが広告で溢れるのも無理はないと思います。なぜなら、ほとんどのIT企業、特にWebサービスやコンテンツを商品としている企業は、主にその収入を広告に頼っているからです。大量のユーザーを集めて広告を流すことで何とか利益をあげている、といったイメージです。ITサービスは参入障壁が低いだけに、マネタイズが困難ですからね。

 

彼らの正義はこうでしょう。素晴らしい商品を勧めることで顧客の役に立っている、だから広告を表示することには意義がある。ではなぜ、ほんのわずかな人しかその商品を実際に購入しないのでしょうか。それは数%の人の役にしか立っていないからです。

 

では残りの大多数にとってはどうでしょうか。何の悪影響も与えていないと言い切れるでしょうか。少なくとも私は、今のネット上に溢れる広告を迷惑に感じずにはいられません。邪魔ですし、そもそもおすすめの商品の提案など求めていません。求めてもいないのに色んな人からアドバイスをされているような感覚になります。同じように感じている人もいるでしょう。今より広告が増えると、迷惑に感じる人は増えるはずです。

 

迷惑に感じるならネットを見なければいいではないか、こういう意見もあるでしょう。正論です。正論ですが、正論が勝つわけではなく、大多数の意見が勝つのです。ネットは多くの人にとってもはや必需品であり、多くの人が広告を迷惑に感じるようになれば、広告の正しいあり方についての議論が生まれてくる可能性は十分にあります。というかすでに生まれています。

 

そもそも、広告がどれほどの効果をもたらすのかについては懐疑的です。聞いた話によると、広告を載せることで何%購入率が上がるといった予測値のようなものは存在しないらしいのです。ネットに広告を載せても対した収益が見込めないと判断されれば最後、IT企業の収益源は大打撃を受けることになるでしょう。

 

逆にユーザーの方にも動きがあります。私はインストールしていませんが、広告をブロックするアプリがあるようなのです。すでに20%の人々が使用しており、近い将来50%ぐらいの人が使用するのではないかという意見もあります。顧客もバカではない、というわけです。

 

これに対し、広告収入で収益をあげている企業側の中には、広告ブロックをするユーザーは「レストランで食事をし、支払いをしない客のようなもの」と例える意見もあります。中々いいたとえです。非常に共感しました。企業側がそれ言っちゃダメだろ、って感じですが。

 

確かに私たちはフェイスブックYouTubeにお金を払いません。私たちはすでに、あらゆるネットサービスは無料で手に入って当たり前、という価値観になってしまっているんですね。なぜかというと、IT企業の多くがフリーミアム戦略を取ってしまったからです。ユーザーに与えるだけ与えて、ユーザーからはお金を取らない。

 

この考え方に関しては「お客様は神様」という古き日本の伝統と似通ったものを感じます。で、この思想こそがお客様であるユーザーをどんどん傲慢にしてしまったと言えます。だから、お金を払ってもいないくせにクレームだけは主張する。どこかで歯止めをかけないと企業はどんどん苦しくなっていくでしょう。

 

個人的にはフリーミアムはもう時代遅れだと思っています。これからはユーザーと企業が対等な関係を保てるビジネスモデルが徐々に現れてくるはずです。企業側はちゃんと提供するサービスに対してユーザーからお金を要求し、ユーザーもお金を払ってでも利用したいサービスに対してお金を払う。

 

企業側が、今のユーザーの価値観でお金を払ってでも使いたいサービスを提供できるか、が難しいポイントになるでしょう。例えば今、フェイスブックYouTubeが月額制を導入してどれほどの人が利用してくれるでしょうか。昔以上にユーザーの期待値が上がってしまった今、どんなサービスが生まれるか楽しみです。