∑考=人

そして今日も考える。

過去の自分に戻りたい理由考えたことある?

「子供の頃は良かった」とか「学生時代に戻りたい」とか、社会の人は口々に言います。私の周りでも、あの時に戻りたいなーと半ば本気で言ってる人も結構います。(どこまで本気なのかはわかりませんが。)ちなみに私の統計では、高学歴の人間ほどそのような発言をする人が多いし、女性ほどのそのような発言をする人が多いです。

 

なお、私は大学生の頃ならまだしも、社会人になってから昔に戻りたいと思ったことは一度もありません。別に今がめちゃくちゃ楽しいわけでもない、むしろそんなに楽しくはないですけど、学生時代ってそんなに楽しかったっけ?って感じです。少なくとも天秤にかけた時に、やっぱ今の方がいいなって思います。

 

理由はたった二つです。今の生活の方が過去の生活よりも圧倒的に自由だから。そして、今の自分の方が過去の自分よりも圧倒的に賢いからです。後者については公言こそしませんが、そう確信しています。

 

むしろ、私が気になっているのは、皆が口々に言う「過去に戻りたい」理由は何なのかということなんですね。そりゃあ学生の頃が楽しかったからなのでしょうが、じゃあ学生の頃はなぜ楽しかったのか。たぶん、ここまで考えたことのある人の数はガクッと下がるんじゃないかと思います。

 

すでに述べたように私は過去に戻りたくはない側の人間なので、実際のところはわかりませんよ。ただ、一般的な理由でなんとなく思いつくのは、利害で繋がった人間関係、労働の義務感などでしょうか。

 

でも私が考えているのはちょっと違います。おそらく、社会人になった人の多くが、学生の頃の自分が全盛期だったと考えているからです。私が過去の自分に戻りたくない理由と同じです。

 

高学歴エリートは、学生時代においては勝ち組なのです。正確にはその時点では勝ち負けなんてないのですが、少なくとも将来的に勝ち組になるだろうというポテンシャルがあるわけですね。夢や希望を持てるだけの自信がある。偏差値というメトリクスだけで社会からそう評価されるんです。進学校や難関大に入ってそこそこの成績であれば、それだけで自分に自信を持つには十分なのです。

 

さらに、自信があるので人と対等に話をしたり、本音をぶつけることができるので、結果的に有効な関係を築きやすいというオプション付きです。また、努力が成果に繋がりやすいことしか評価されないので、自信を保ちやすい環境も整っています。そのため、多少苦痛を伴うような勉強とかもそれなりに楽しくやり切れるというわけです。

 

しかし、いざ日本社会に出てみると、学生時代の頃とは全く異なる世界が待ち受けています。まず、正解がわからないし、正解らしきものが分かったとしてもそこにたどり着くための方法論も無数にある。自分が正解だと思っても、組織からの評価が良いとは限らない。客観的な評価基準がない、あるいは無数に存在している、といった状況です。

 

そんな中で自分の能力、凄さがわからなくなってくると、自分に自信を持てなくなってきますよね。また、今までは努力すれば成果に繋がると思っていたのに、努力の仕方がわからない、とか。こんな風に、「どうすればいいかわからない」状態になると、結構しんどい。もしかして自分てダメなやつかも、とも思うでしょう。

 

こうなると、人生のハリが無くなる。人生にハリがないとつまらない。逆に人生にハリがあった学生の頃が恋しくなる。過去の自分に戻りたいと思う。だいたいそういうプロセスなんじゃないでしょうか。ただの仮説ではありますが、当たらずとも遠からず、な気がするんですが。

 

逆に非高学歴な人の場合が過去に戻りたい、とか言わない理由は、今を結構楽しんでるんですよ。この職場つまらないと思ったらさっさと転職してます。そもそも勉強つまらないからやらない、って人が今非高学歴になっているので、当然そういう行動選択をするでしょう。彼らは私から見ると、かなり苦労していますが、それでも人生楽しそうです。

 

これが事実だとすると結構面白いですよね。高学歴の人って将来のこと考えて、子供の時から遊ぶ時間を犠牲にして勉強してきたのに、いざその”将来”になってみると、「子供の頃の方が良かった」とか言っちゃってる一方で、将来のことを全く考えずに子供の頃勉強をしてこなかった人が、いざその”将来”になってみると、意外と楽しんでるっていう(笑)。いや、高学歴側としては全然笑えないけど。

 

で、高学歴の人間は子供の頃考えてた”将来”が既に到来しているのに、今なお”将来”の心配してるっていう。結果、現状を変えようとはしないんですね。人のこと言えないですけど。結局、学校で習った価値観に未だ縛られてるんでしょうね。

 

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