∑考=人

そして今日も考える。

÷×÷=×

フェイスブックで6÷2(1+2)=?という問題を見つけました。こんな単純な計算式であるにも関わらず、正答率が8%しかないらしい。ちなみにこの問題の出題者の意図する答えは「9」である。だがそんなことは気にする必要はない。そもそも誤解を招く問題であることは間違いないし、絶対にどちらが正しいとは言い切れないのかもしれない。でも、かつて数学の神童と呼ばれた私はこの問題に回答するなら「1」である。

 

まず、ここでは正解とされている6÷2(1+2)=9になる論理を説明する。まず、2(1+2)についてだが、数式の原則として、カッコの中を最初に計算するというものがある。だから2(1+2)=2(3)となる。そして、2(3)というのは2×3のことを表す。よって、全体として、6÷2×3=9となるわけだ。さらに補足するように、関数電卓Googleの電卓では9が出力されることも実証されている。

 

これを聞いて、「あーそうだったんだー」なんて易々と騙されてはいけない。これは完璧な間違いだ。個人的にすごく浅はかだと思ったのが、電卓での答えが9だから9という主張だ。実に馬鹿げている。数学の理論と電卓、どちらの歴史が長いかを考えれば明らかだ。電卓の方が間違っているのだ。数式理論の不明確な点をプログラム化できていないだけなのだ。

 

元々の議論は答えが9であるか1であるかだが、ここでの論点は6÷2(1+2)を省略せずに書いたときに6÷2×(1+2)になるのか6÷2÷(1+2)になるのかの違いだ。そして、それが後者になる、ということを簡単に証明しよう。(1+2)=xとでも考えればいい。括弧でくくられた式は一文字の未知数として考えるテクニックは数学でよく出てくる。こう考えたときに、6÷2xはどう計算されるかというと、1/3xで正解となる。これはなぜか?

 

そもそも2(1+2)というのは、正確に記述するならば{2(1+2)}である。多くの場合は、冗長な表現になるので省略されるのが一般的だ。しかし、括弧の前に+や-ではなく、×や÷が登場するときには問題になる。 関数電卓でも中括弧{}をきちんとつけてやれば、1という答えが導き出される。暗黙の省略を電卓は感知できない仕組みになっている。

 

なぜ、こういった誤解が伴うのかというと、×と÷の乗除についての定義がされていないからだ。+と-の掛け算や割り算については多くの人がきちんと理解している。+と-の積は-、-と-の積が+になることは、おそらく小学校レベルの教科書で説明されている。正確には-×-とは(-1)×(-1)のことを指す。

 

しかし、実は×と÷についても+-と同じような関係性がある。数式で表現するとややこしいが、××÷=÷、÷×÷=×となるようになっている。例えば、10÷(2×4)=10÷2÷4と等しい。しかし、×や÷は+や-とは異り符号という扱い方はできない(明確には、プラスやマイナスと足し算と引き算の記号も別物)。なので、(÷1)×(÷1)といった表現は不適切となる。だが、このように×や÷を符号として捉えてれば、自然と省略された()について意識するようになる。

 

こういった考え方もなしに、先ほどの例である6÷2(1+2)という数式を解こうとすると、単純に6÷2×(1+2)と考えてしまうかもしれない。しかし、×や÷を+や-のように符号として考えていれば、(×6)×(÷2)×{(×1)+(×2)}=(×6)× (÷2)×(×3)=(×6)×(÷6)=(×1)=1と答えが導ける。3-2=(+3)+(-2)という考え方と同じである。

 

しかし、前述のとおり、数学的に正しい考え方ではないのも事実だ。そのため、1が必ずしも正しいとは言い切れない節がある。数学の先生ぐらいしかこのような問題を考えることはないだろうが、このような誤解を招く表現は使わないことを推奨したい。